蒼く短い夢

□最後に見た水溜りは
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「あーめ、あーめっ、ふーれ、ふーれっ、母さんがー」



ピチャン、ピチャン


小さな子が水溜まりを蹴りあげる音
母親の小さな微笑み
咲き誇る紫陽花の群れ




「雨、か…」




雨が降りしきる中、傘もささずにひたすら棒立ちしていた少年は、ふいに涙を溢す



「名前さん…」




その声色はどこまでも切なく、絶望に染まっていた。





「助けてあげられなくてほんま、すまんっ…」




少年は知らない。
その絶望は、誰によって造り出されたのか。




「絶対、敵はとるから…」




少年は知らない。
絶望の中心の赤い水溜まりを造った少年を。




「っ…うわぁぁぁぁぁッ!」




ただ少年が知っているのは
彼の
花のような笑顔、
少年の名を呼ぶ声、
果実のように甘い口付け、
繋ぐ手の温かさ…


そして過ぎ去りし日の数々の想い出だけ。




だが最後に見た
彼の
苦しみに耐えた笑顔、
か細く少年の名を呼ぶ声、
鉄の味がする苦い口付け、
凍るような冷たい体温は



もう既に少年の記憶から消されているだろう。

いや、正確に言えば
今のこの少年の記憶には
初めからそのような記憶はない。



少年は気付かない
最愛の人を奪った少年を、
最愛の人の苦しみを愛した少年を、




「名前さん。愛してるよ、だから…お前を奪った奴を殺したら、俺も、そっちに…」






最後に見た水溜りは
(少年は気付くだろうか)
(彼を殺したのは、もう一人の少年自身だということに)








あとがき


雰囲気文乙w
しかも2作連続病んでるw
あとこれ、何も廉造じゃなくても良かった気がする(´・ω・`)

と、とにかく
部活で二重人格の話が出てからずっと二重人格者の話が書きたかったんだぁぁぁあっ!!


結果的に病んじゃったけど(笑)

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