伝説の七賢者と魔神
□序章「始まりは鐘の音で」
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「お兄ちゃん」
僕は肉親の兄の名を呼ぶと同時に、兄の友達に頭を下げた。
お父さんもお母さんもすでに死んじゃってるけど寂しくなんかない。
僕には兄が居る。
しかも僕が幼い時に親が死んでいた。だから記憶が全然ない。
ちょっぴり寂しいけど。
しょうがないよね、知らないもの。
「クリュウ」
「クリュウちゃん、こんにちは」
二人に名前を呼ばれ、慌てて笑顔を作る。
「こんにちは、海音さん」お兄ちゃんのお友達の名前を笑顔で言う。
僕、あまりかかわりたくないんだよね、人と。
兄以外の『人』と。
嫌な感じ、自分を利用する気じゃないかって。
その『人』が思ってなくても、僕は拒否反応を示す。どんな人であろうと。
海音さんはいつの間にか居なくなってた。
自宅へ帰ったらしい。
「帰るか」兄が手を伸ばした。
僕はその手を取った。
*
「……?」
夜中、何故か起きてしまった。
眠いはずなのに。
隣にいるはずの兄が居ない。玄関のドアがしまる音がした。僕は起き上がった。
窓を見ると兄がリュックを背負って家を後にしていた。
(何処行くのかな……)僕は兄の後をこっそり付いて行くことに。
ついて行くと湖についた。
其処には海音さんもいた。
「いいのか?」
「あぁ、あいつには悪いが……」
よく聞こえない。
でもこれ以上近づいたら気付かれてしまう。
そう思っていた時、兄の信じられない言葉を聞いた。
「クリュウを捨てていくしかない」
え……?
僕を捨てていく……?この僕を?
僕は力なく座り込んだ、座り込んだ音が兄達に聞こえてしまった。
「誰だ!」兄の警戒する声。
ゆっくり僕は姿を曝した。兄は絶句していたが。
「……クリュウ……?」
僕は泣いていた。
兄は、僕を捨てていく。
僕なんかいらないんだ。
必要とされていなかった。
存在を認めてくれてなかった。
悔しい、悲しい。酷い、酷いよ……。
「お兄ちゃんは……妹なんて必要なかったんだね。……行けば?二度と帰ってこないで。僕の前に現れないで、大っ嫌い。お前なんか兄じゃない!兄妹なんかじゃない!!」
僕は怒鳴って家に逃げ帰った。
そして兄を拒絶し、鍵を閉めた。
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