私家版幕恋外伝・彦島を見守る魂


□その六
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けど。

「仲直りはしてないぞっ!」
と、高杉さんは真剣な顔で言った。
「俺はまだ、許したわけじゃないっ!」

ええっ…!
桂さんじゃなく、高杉さんが根に持つんですか、今度は?

「晋作。確かに私が悪かった。変に薩摩の動きを勘ぐって、神経質に当り散らして…」
「そっちの話じゃないっ!こいつは、俺に長州に帰れとぬかしやがった」
「だから、悪かったと言ってるじゃないか…」

「ゆうっ!」
「はい?」
高杉さんは、子供が言いつけるような顔で、私に言った。
「こいつはなぁ、俺が無神経で大雑把で考えなしだから、外交交渉には向かんと言いやがったんだ!」
「…いや、そこまでは言った覚えはないよ」
「久坂と一緒に動いていたころが懐かしい、俺じゃ久坂の代わりにはならんから要らんとぬかしやがった!」
「だから、そこまでは言っていないだろう…」
と桂さんは言いかけ、

「ああ。そっちで怒っているのか」
と笑った。
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