正助と小娘

□第一章
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「お前…名前なんて言うんだ?」
と、その子は聞いた。

「名前?」

「…まあいいや。別に。気が向いたら、憶えてやってもいいと思っただけだから」

「ゆうだけど…」

「つまらない名前だな。もう少し、おどろおどろしい方がいいのに」

しっ…失礼な。
だいたい、何を期待してんのよ。

「君の名は?」
「…正助」

「自分だって普通の名前じゃん」
「…何だと?」

「ううん…何でもない。
あとね…ここ、京都じゃ…ないよね?」

「京都ぉ?」

やっぱ、違うか。

「お前…京都に化けて出るつもりで、間違って鹿児島に出たのか?」

か、鹿児島?

「鹿児島ってゆーと…藩は…」

「薩摩だ。本当に何も知らないやつだな」

どうなってるの?

正助君は、私があせりまくっているのを見て、あきれたようにため息をついた。

「で、お前、京都に何があるんだ?」

「え?」

「京都に出たかったんだろう?元のすみかが京都なのか?」

「えと…と言うか…どうしても会いたい人が京都にいて…」

「ふん。どこまで馬鹿な妖怪なんだ、お前」

…その妖怪って設定、なんとかしてほしいんですけど。

「…わかった」

えっ?

「何か知らないけど、困ってるんだろう?協力する。
まあ、その前に、縛られてるのを何とかする方が先だけどな。しばらく待ってろ」

な、何…?

嬉しいけど…。
その、自分なら何とかできるみたいな、その根拠のない自信はどっから…?

つか…私…。
前の時に龍馬さんたちに拾われたみたいに、今回はこの子に拾われたってことに…なっちゃうのかな?

<2011/7/5>

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