正助と小娘

□第七章
1ページ/8ページ

正助君が、別当をやっつけた話は、本筋とはちょっと離れるから大雑把にしか書かないけど…。

なんで風呂屋かってのは、すぐにわかった。

町奉行の与力ってのは、夜勤明けの朝とかに一番風呂を浴びて出勤するんだけど、他の客と違う貸し切りの所を使うんだって。

江戸時代の湯屋って、今の銭湯と違って、風呂上りには二階にあるちょっとした座敷でお茶とか飲んでしばらくくつろいだり、おしゃべりするのがふつう。
私は数回しか行ったことないけど、けっこう楽しいです。

正助君たちは子どもだから、風呂屋に潜り込んで、小僧みたいな顔してお茶でも出していれば、与力も警戒しない。
今騒ぎになっている連続児童誘拐事件の捜査状況(まあ、江戸時代だとそういう言い方しないけど)について会話が聞ける。

それでわかったのは、町奉行は今、必死になって犯人を捜しているってこと。
犯人がお坊さんで、管轄外で捕まえられないって知らないから、よくも小さな子どもたちを…ってかなり真剣に追ってる感じだったそうです。


小料理屋のほうは、正助君はぼたん鍋や豚の角煮が名物の店を選んでたけど、何でかは教えてくれなかった。

「まあ、見てろ」
と、得意そうに口の端で笑ったとこを見ると、ほんとは言いたくてしかたないけど、まだそのタイミングじゃないらしい。


それから、正助君は別当を呼び出す手紙を書いた。
何やらきれいな小箱も添えてあって、一見恋文みたいな見た目だと言ったら、気色悪いことを言うなと怒られた。

例によって、弥助君、竜助君が茶々を入れる。
「あの別当がショースケ縛り上げたのって、教育のためとかとは違うんじゃね?」
「ショースケ、色子になれって言われたんじゃないかって、噂あるし」

「お前らなあ。今からでも、一度ふん縛られたいか?」
と、正助君に怒られて、二人は逃げた。

いろごって、何だろ?


次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ