さらば愛しき馬鹿娘

□第七章
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いや…その…こっから先は、本当にカナコの言ったとおり、しっちゃかめっちゃかです。

だから、全部細かく書くとわけわかんないんで、大雑把に書くことにします。


私たちが東京の私の家に帰ると、なんか高そうな自動車が止まってて…なぜか道場で、人払いして、うちの両親とおじいちゃんとが、その大叔母様と会ってた。
道場を選んだのは、その大叔母様のご希望らしい。

この人…かなりお年の人らしいんですが、藤色の和服をびしっと来て背筋伸ばして、凛と響く声で上から目線でビシバシいう人で…。
んーと…なんか江戸時代から間違ってタイムスリップしてきたっぽいというか…。
確かに、武士の子孫の家の、女主人って感じでしたね。

おじいちゃんは「極道の妻に似ている」と言ってましたが。

でもって、なんか黒スーツの助手みたいな人たちに、道場の床にずらっといろんな資料を並べさせてたんだけど…。

私が昔、高杉さんに書いた手紙の筆跡鑑定とか、写真の骨格判定とか、長州藩邸で失くしたと思ってた櫛についてた髪の毛のDNA鑑定とか…。
とにかく科学鑑識総動員して、1866年に写真に撮られた女の子は私だって、とうとうと説明したらしいです。私は聞いてないけど。

それでもうちの両親が信じなかったもんで、どっかの国会議員のとこまで電話かけさせたらしい。

でも、あんまり上から目線で、お宅の娘さんを連れて行きたいとか言っちゃうから、完全に父さん母さんに嫌われた。
つか、言うことがめちゃくちゃなのに自信たっぷりで、やたら科学的証拠とか出しちゃうから…どっかのカルト宗教だと信じ込まれてしまった。

カナコといとこが必死になって間に入って取りつくろおうとしたんだけど…。

カナコまで、母さんに、
「成績がいいから、しっかりしたお子さんだと思っていたのに。
もううちの娘に近づかないでちょうだい」
と、言われてしまった。

カナコは、なんかすごくショックを受けていた。
そりゃそうだよね。
前からちょっと思ってたけど、うちの母さん、カナコが成績いいから、私の友達として認めてくれてたんだ…。
カナコの面倒見のいいとことか、私を大好きでいてくれてるとことか、全然評価してなかった。

んでもって…私も、これじゃヤバいよって思って…いろいろ言ったんだけど…。
もう一回、私に何があったかを、真面目に説明しようと思ったけど、話の途中で母さんは泣き出すし、父さんには黙れって怒鳴られちゃうし…。

それでも、私が大久保さんに会いたいから、幕末に行くのを許してくださいとか、ついマジになって、粘って言っちゃったもんだから…。
うちの両親、完全に、私がカルトに騙されてるとか誤解してしまって…。
学校にも行くなって言われて、携帯も取り上げられて、二階の私の部屋から出してもらえなくなっちゃいました。

おじいちゃんは、父さん母さんに、娘の話をちゃんと聞いてやれって言ったんだけど…お父さんに殴られそうになった。
いや、本気でケンカすると、実はまだおじいちゃんの方が強いから、父さんが殴ろうとしても、げんこつ当たんないんだけどさ。

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