さらば愛しき馬鹿娘

□第八章
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私…もしかしたら…。
大久保さんに会えないで、このまま焼け死んじゃうの?

あんなに苦労して…。
いっぱい泣いて。
やっと幕末に帰って来れたのに?

私が帰って来たことに、大久保さんに気づかれないまま、この炎の中で死んじゃうの?

この京都のどこか…。
もしかしたら、ほんのすぐ近くに…。
大久保さんがいるかもしれないのに?

そんなの、いやだ。

「大久保さーーーんっ!!」

なんか、思わず叫んでた。

会いたいよ。

私、ほんと、馬鹿だった。
反省するから…。
だから、助けにきて…。

私は何度も大久保さんの名前を呼んでた。

私、ずっとずううううっと、大久保さんのそばにいたかったのに…。
自分では、一生懸命、がんばったつもりなのに。

なんで、うまくいかないんだろ…。

大久保さんと、ずっと、一緒にいたいって…そんなに大それた望みなんかじゃ、ないよね?


でも…もう…こんなに煙に巻かれちゃったら…。
苦しくて…走れないよ…。

逃げないといけないのに…。


いつの間にか私の周りはすべて炎に囲まれていて、逃げ場がぜんぜんなくなってた。

炎に包まれた寺田屋の建物の壁が、ばきばきと大きな音を立てて、崩れ始めた。
こちらに倒れてくる。

ど…どうしよう…。

どこにも逃げられないよ…。

このままじゃ…燃える建物の下敷きになっちゃう。
死んじゃうよっ。

死にたくないよっ。

私は目をつぶって、力いっぱい叫んでた。

「助けてーーーーっ!!利通さあああーーーんっ」

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