さらば愛しき馬鹿娘

□第十一章
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それであの…照れる話なんだけど…。

実は私が一回未来に帰っちゃう前に、ちょこっとだけ、あるお公家さんの養女になるって話があったんだけど…。
それが、とんとん拍子に決まりまして…。

いや、とんとん拍子っつか…。
たしか未来に帰る前には、お公家さんって何をするにも数か月はかかるとか言われてたはずなのに…。
その時は何かもう、勢いと言うか、お公家さんたちは大久保さんの言うことなら何でも聞くみたいなノリになっちゃってて…ほとんど数日で決まってしまいました。

で、お公家さんとこの養女になったら、今度はまたほんの数日で…その…大久保家の方に、入ることになりました。

…うっ…書いてて照れる。

つまり…あの…。

私たち、結婚しました。



しかし、何だろうね、この強引なまでの性急さ。

この話が出た時、大久保さんは、高笑いしながら、

「今だったら、幕府の制度が崩壊しているから、ドサクサに紛れて、お前に新しい身分を作ってやるのも楽にできるぞ。
いつまでも無宿者でいるのも何かと面倒だ。とりあえず大久保家の端の方にでも放り込んでおいてやる」

と、ものすごーく恩着せがましい口調で言った。

あの…それって公の文書を偽造しちゃうってことですか?
今から新政府作ろうって人が、そういうヤバいことしていいんでしょうか…。

なんか2回目のプロポーズし直しとはいえ…。


『お前の身分を偽造してやる』ってのは…求婚のセリフとしては、あんまりだと思う。


いや…その…さすがに倒幕のために薩摩が戦っている最中に、ロマンチックな愛のセリフとかねだっちゃいけないのかなと思うけど。

私が、そりゃあないよ…と、ぽけっと口を開けてたら、大久保さんは、

「何だ?ずいぶんと呆けているが…。身に余る光栄すぎて、言葉も出ないか」

と、もう完全に上から目線で、例によってふふん、とか言ってた。
一応かっこだけは、唇をひん曲げて、腕を組んで、斜に構えてはいた。

だけど…もう見るからに上機嫌で…。
なんですか、これは?って言いたくなるぐらい、むちゃくちゃ嬉しそうで…。

なんかもう、はた迷惑なくらい、幸せオーラまき散らしてくれてて…。

目には見えないけど、利通さんの背中には花が飛び交ってます、みたいな雰囲気で…。

たまたま仕事関係でフォーマルな洋装着て、ステッキ持ってたんだけど…。
その格好で浮かれてると、今にもタップダンスを踊り出しそうで、ちょっとはらはらしました。


で、私、つい…それを見てて…。


なんて可愛いんだろ、この人。


とか…思っちゃいました。
年上の人に…そんなこと、考えていいんだろか。

でも、大久保さんが幸せオーラふりまいて止まんないのと同じように…。
私も、ふと気づくと利通さんのことばっか考えてる感じで、なんかもう、大好き大好き大好きって、考えがループして止まんなくなっちゃってて…。


なもんで、気が付いたら、

「えと…よろしくお願いします…」

とか、自分でもわけのわかんない言い方で、OKしちゃってた。

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