私家版幕恋外伝・彦島を見守る魂


□その二
8ページ/9ページ

「ゆうさん、君が攘夷について聞いて回るなんて、いったいどうした風の吹き回しだい?」
と、やさしそうに桂さんは聞いた。

「いえ、いつも皆の難しい話についていけないのも、なんだか情けないから、勉強しなくちゃと思って…」
と私は答えた。

なんか大久保さんに教えてもらったら、半分くらいわかった気がしたので、もう少し頑張ったら全部わかるかなと思って…と続けようと思ったら、その前に桂さんが、にっこりと笑って答えた。

「それは悪かったね。君にはずいぶん気を遣わせてしまったようだ。
攘夷なんて、普通の人には興味がなくて当たり前だからね。つまらない議論をする私たちの方が変わっているんだよ。だから、君はそんなことは考えなくていいんだよ」

そう言うと、桂さんは私の髪をくしゃっといじって、顔を覗き込んだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ