私家版幕恋外伝・彦島を見守る魂
□その二
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「ゆうさん、君が攘夷について聞いて回るなんて、いったいどうした風の吹き回しだい?」
と、やさしそうに桂さんは聞いた。
「いえ、いつも皆の難しい話についていけないのも、なんだか情けないから、勉強しなくちゃと思って…」
と私は答えた。
なんか大久保さんに教えてもらったら、半分くらいわかった気がしたので、もう少し頑張ったら全部わかるかなと思って…と続けようと思ったら、その前に桂さんが、にっこりと笑って答えた。
「それは悪かったね。君にはずいぶん気を遣わせてしまったようだ。
攘夷なんて、普通の人には興味がなくて当たり前だからね。つまらない議論をする私たちの方が変わっているんだよ。だから、君はそんなことは考えなくていいんだよ」
そう言うと、桂さんは私の髪をくしゃっといじって、顔を覗き込んだ。