私家版幕恋外伝・彦島を見守る魂
□その三
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「それって放火犯じゃないですか。ほんとにそんなことしたんですか?」
うっ、と高杉さんが言葉につまる。
「あ…あれはっ!若気のいたりというやつだっ!」
「いたり過ぎだ」
と武市さんがさらに追い詰める。
はあ…と桂さんがため息をつく。
「本当に晋作は、昔から目を離すとろくなことをしませんから。あの時も、私に隠れて何やらこそこそ計画していたと思ったら…」
「待て、小五郎!その説教はすでに百回くらい聞いてるぞっ!」
うーん…ほんとにしたんだ…放火…。
どうフォローしようかとおろおろしている私の顔を見て、武市さんがにっこりほほ笑んだ。
「まあ、公使館は普請中でしたから。人に被害はありませんでしたよ」
そっか…よかった…。ってそういう問題じゃないよね。