さらば愛しき馬鹿娘

□第一章
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で、高杉さんと桂さんと私の三人は、伏見の外れまで一緒に歩いて行くことになったんだけど…。

高杉さんが寄っておきたい場所があると言うので、ついて行ったら、例の神社だった。
そこで、高杉さんは、

「なあ、ゆう。お前、竹取物語というのを知っているか?」

と、例によって、突然とっぴょうしもないことを言い出した。

「は?」

私が思わず桂さんの方を見ると、桂さんも困った顔をしていた。

「晋作…。お前の古典文学好きは昔からだけれど、何もこんな時にまで、話す必要はないだろう?」

「こら、知識欲は、いつだって大事だぞ!」
と高杉さんは、憤慨したように言った。

「そうだな…例えば、古典文学をかじっているとだな。日本語の変化の進み具合で、ゆうがだいたいどの程度の未来から来たかが、わかる。
せいぜい…今から百五十年ってところだな」

「へ…?」
「当たったか?」

「いえ…だいたい今が西暦何年かわかんないし…」
「その『せいれき』というのは何だ?」

「西洋の暦ですよ。私の来たのは20XX年だけど…こっちがいったい何年になるかわかんないし…」

あ…言っちゃってよかったのかな?

「なら、当たりだな」
「え?」

「先日、大村のやつが、今年出たばかりの銃の話をしていて、ウィンチェスター1866年型と言っていたからな。
おそらく、1866年というのは、その西暦だろう」

そ…そうなんだ…。

なんか突然、自分がどの時代に飛んだかがわかって、私の頭の中はぐるぐるしてしまった。

「なあ。古典文学ってのも、バカにしたものではないだろう?」
と、高杉さんは自慢げに笑った。

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