さらば愛しき馬鹿娘

□第五章
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うちの学校の土蔵は…つか、元タバコ倉庫は、倉敷とかにあるやつより、ちょっぴり洋風の、レトロな白い建物だった。
倉庫なんだけど…きっとカフェとかに改造したらきれいなんだろうなって建物で…。

いかにも明治に作られたって感じのレトロな外見の白い建物に、ツタがからんで、とっても古めかしい雰囲気もあった。

蔵の扉はいくつかあったけど、私たちは、いちばん剣道部の部室に近いのを選んだ。
カギは大きくて、古めかしくて、なんか簡単に開きそうな構造だったけど、開けるのにはすごい力が要って、私たちは何回か交代でガシガシ回してみた。
そのうちに、バチンとネジの回る音がして、土蔵の戸は開いた。

ふわっと、なんだか昔っぽい匂いが漂ってくる。
手入れは悪くないみたいだけど、それでもホコリとカビの匂いは少しした。あと、何か防虫剤っぽい匂い。

私たちは、用意してた懐中電灯をつけてみたけど…。なんか、いろんな物が置いてあって、光は中までは射し込まなかった。

「思ったより広いけど…どこ探せばいいの?」

私は、間抜けな質問をした。

蔵の天井は思ったより高くて、ステンドグラスみたいのがはまった明り取りの窓から、月の光がさしていた。

「んー…」と、スズミは考え込んだ。「創立直後のものが置いてあるなら、まずはいちばん奥じゃない?」

「あんたにしちゃ、珍しく論理的」と、カナコ。

スズミはそれを無視して、ずんずんと奥に入って行った。

私は、奥に入りながら、置いてある品物をところどころ照らして、のぞいてみた。

「何、これ…『昭和二十五年 GHQ推薦 正しい男女交際の指導法 小冊子』?」
「ゆう、寄り道して遊ばない。私たちは昭和じゃなくて、明治の探してんの」

「だってこれ、面白いよ。

『男女二人で出かける場合は、必ず男子が女子の家まで迎えに行きましょう。
家人に礼儀正しく挨拶したのち、今日の予定について詳しく説明して、許可をいただきましょう。
カフェヱには、未成年の男女二人だけで入ってはなりません』

とか書いてある」

「…幕末より厳しいとか、言いたいわけ?」と、カナコは白けた声を出した。

「こっちこっち」
と、先を進んでいたスズミが、明り取りの窓のすぐ近くを指した。そこだけ、少し高くなってて、中二階みたいになっている場所があった。
「あの辺一帯が、いちばん箱とかに書いてある字体が古い。たぶん明治だと思う」

「さすが書道部」と、珍しくカナコがほめた。

スズミは無視して、木の梯子を上って行った。
「あれ?」

「今度は何よ」と、カナコ。

「部屋みたいになってるよ、ここの上」

私とカナコは、梯子を続いて上って行った。確かに、上り切ったところはまた、扉になってた。

スズミは、鍵束をジャラジャラ言わせて、合うカギを探していたけど、こっちは意外に簡単に開いた。

「うわ…なんかきれい」

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