用語集

【ら】 7件

【来国俊 (らいくにとし)】
大久保さんが慶応3年9月18日に長州藩主の毛利敬親からもらった短刀。
この時期は第二次長州征討の主な戦闘がほぼ終わり、長州の全面勝利で決着しつつあったころ。
大久保さんは次の動き、つまり倒幕準備のために長州藩を訪ねていて、藩主に拝謁したところ、「差料を遣わす」と手ずからこの短刀をくれた。
つっても折紙(鑑定書)付きだったと日記に書いてあるので、たぶん木箱に入ってたんだろなと思う。
藩主様は差料(自分の腰に差して使う刀)って言ったけど、来国俊は鎌倉時代末期(13世紀末〜14世紀初め)の刀工だから、幕末の時点ですでに500年以上前経っている貴重な芸術品である。さすがに普段使いにはしなかったと思うけど、どうなんだろ。

ちなみにこの短刀は後に、薩摩辞書を作った前田正名が渡仏するときに餞別としてあげている。
前田さんはよっぽど大久保家と親戚の皆さんに好かれてたらしく、大久保さんの死後、子どもたちを守るために家に住み込む。大久保さんの末妹の娘のいちさんもひとつ屋根の下で子どもの世話をしていて、二人は恋に落ちて結婚する。
つーことで、この短刀は再び大久保家に戻って、現在大事に保管されているらしい。

ちなみに東京農工大にある大久保さんの石碑にも、大久保さん愛用の短刀が収められている。こっちの由来は不明。


【ライディングゲイター (らいでぃんぐげいたー)】
大久保さんの洋装の足元は、一見ロングブーツっぽいが、どうやらショートブーツ+ライディングゲイターらしい。

ゲイター(gaiter)は、日本語ではゲートルとも呼ばれる。足首部分から膝下までをカバーするもの。
ゲートルというと日本陸軍のはいてた脚絆みたいののイメージが強いが、布を巻きつけるタイプ以外に、皮や筒型のものもある。

大久保さんのは乗馬用で、英国ではライディングゲイター、米国ではハーフチャップスと呼ぶ。
ライディングゲイターは革製が多く、ショートブーツの上につけるとほぼロングブーツと同じに見える。
ロングブーツの上にゲイターをつけることはない。
大久保さんの膝下、ゲイターの上端からブーツと同じ色の黒っぽいものがちらっとのぞいているが、あれはガーターベルトで、パンツ(ブリーチまたはジョッパー)がずり上がらないためにあそこに巻くのがお作法。

ゲイターは、幕恋の時代ごろには軍装にも使われたが、フォーマルではないので、社交の場や競技会には使えない。
まあ、ふだんから窮屈な格好なんかできるかとおっしゃっていたので、大久保さん的にはかなりカジュアルなつもりなのでしょう。

大久保さんの洋装って、基本路線は、英国貴族が領地内を巡回したり、仲間うちで遠乗りに行ったりするときの格好ってことで、上から下までちゃんと統一されているんですね。


【ライフル (らいふる)】
幕末に活躍した銃や、当時最新式で、志士たちの憧れだったけど高くて手に入らなかった銃には、以下のものがある。

エンフィールド銃(前装式歩兵用ライフル。第二次長州征伐で奇兵隊が使った)
 ↑薩長同盟を通じて買ったやつです
スナイドル銃(後装式歩兵用ライフル。戊辰戦争から西南戦争で、薩摩軍が使った)
 ↑この銃の話には、ときどき大久保さんの名前が出てくる
スペンサー銃(7連発騎兵用カービンライフル)
ヘンリー銃(16連発騎兵用ライフル)
ウィンチェスターM1866イエローボーイ(連発式レバーアクションライフル。西部劇の定番)

などなど、毎年のように新製品が出てた。お値段は15〜40両くらい。
これとよく比べられる旧式の銃は

ゲベール銃(火打石式マスケット銃。雨に強い)
火縄銃(ゲベール銃より旧式だが、命中精度はいい)

で、こっちは1両〜数両で投げ売りされてた。
要は幕末の銃ってのは、マスケットからライフルに切り替わったと考えればいい。


【ラ行 (らぎょう)】
薩摩弁を調べててわかったんだけど、ラ行が他の音に変わりやすいという特徴がある。
全部が変わるわけじゃなくて、

- 語頭のラ行はダ行に変わる
- 語中のリ・ル・レはイになる
- 語中のラは、イ段の音の後にタとなることがある

例)

来月→でげっ
料理→じゅい
琉球→じゅきゅ
礼→で
俺→おい
柱→はした

関係ないけど、薩摩弁で甘くないことを「じゅきゅがとえ」と言う。意味は「琉球が遠い。」好きだなぁ、この感覚。

例外として、外来語は変化しないこともある。
たとえば、黒板消しは「ラーフル」。もともとはオランダ語らしいっス。

この法則でいくと、桐野は「きいの」、隆盛は「たかもい」になる。
竜助君こと西郷従道は、維新後、東京で西郷隆興(りゅうこう)と登録しようとしたら、なまっていたので従道(じゅうどう)にされてしまったそうです。

発音できない名前はつけるものじゃないっスね。
つって、うちの母の出身は九州じゃないけど、同じように祖父母には発音できない名前だったりする。


【落語 (らくご)】
学校の教科書に載っているような史実じゃなく、幕末の一般の人の生活を知るには、たぶん古典落語を聞くのがいちばん手っ取り早いと思う。

古典落語の有名な噺には、幕末から明治にかけての時期のものが多い。
たとえば「士族の商法」などはおバカな噺ではあるけど、明治維新後、禄を失った士族のみじめさがよく理解できる。

このサイトの話では、例えば「牡丹燈籠」を話題にしたり、「三十石」みたいな京都から大坂の川舟の旅の様子をチラっと書いてるけど、実はどちらの噺も、幕恋の当時、大人気だった落語家さんの作ったものである。

「牡丹燈籠」は、江戸落語の三遊亭圓朝。当時はまだ若かったけど、すでにこの話は大ヒット作だった。
「三十石」(別題「三十石夢乃通路」)は、上方落語の桂文枝。こっちは、大久保さんさえ許してくれれば、小娘ちゃんは大坂の寄席に聞きに行けちゃう。

まあ、当時は武家娘が芝居の話をするだけではしたないと言われていた時代なので、薩摩藩預かりの小娘が、寄席なんて行かせてもらえるわけがない。
つーのも、当時の感覚では、嫁入り前の娘が聞くような話じゃない内容も、けっこうあったから。
「牡丹燈籠」なんか、女の幽霊に惚れられた男が、精気を吸い取られて死ぬって話だけど…まさに、そういう行為をするからなわけで…。最後は二人一緒に、布団の中で死体で見つかるんだよね。


【ラスボス (らすぼす)】
ゲームで最後に登場する最強の敵のこと。
転じて、作中でいちばん強そうなキャラクターのことを指す。

一部の人の間では、大久保さんは幕恋のラスボスと呼ばれている。

でもまあ…幕恋以外の幕末ものでは、いちおう、大久保さんってサブで西郷さんがボスだよねえ。
大久保さんが、百鬼夜行のように大人数の薩摩藩士たちを従えて、カッコつけて立ってるすぐ後ろに青田坊のようにでかい西郷さんが控えてるってイメージも、好きなんですが。(違う話になってる…)

幕恋の他のキャラのルートでは、山場で新選組と戦って、ボロボロになっても小娘を守り、盛り上がったところでラストへ…という展開が多い。
でも、ためしに大久保さんを新選組と戦わせてみたら、わりと余裕で勝ってしまった。だいたいこの人、新選組に追われてないし…。
これでは、いまいち盛り上がらない。

大久保ルートがなかなかできない理由のひとつは、あの大久保さんが必死になっても、小娘を守り切れるか自信がないくらいの、強い敵を出さないと盛り上がらないからかなあ…なんて思ったりもする。


【ラッパ (らっぱ)】
日本で最初に西洋式の吹奏楽を行ったのは、薩摩の軍楽隊。
明治2年に久光公が鎌田真平など薩摩の若者30人を横浜に送り、フェントンに軍楽を学ばせた。

薩摩藩では斉彬公時代にオランダ式の鼓笛隊はできていた。
使っていた楽器はたぶん太鼓、横笛、そしてラッパ。
西洋式砲術の極意は、大勢の兵士に銃を持たせて散開させ、号令ひとつで自在に動かすこと。
戦闘が始まってドンパチやり出すと叫んだぐらいじゃ聞こえないし、煙で合図も見えなくなるから、信号ラッパで号令を出したんですね。

なもんで、薩摩藩邸で毎朝起床ラッパとか響いていたら面白いなあ…と思ってしまいました。

若い藩士の皆さんが前の晩、酒盛りして広間に雑魚寝しちゃってると、西洋式のラッパの音が響いて皆を叩き起こす。
「わや起きんかァ!」とか、先輩が後輩を叩き起こして、皆で走ってって、中庭にあわてて整列する。
中庭のラッパ手(誰に吹かせよ?)の横には、大久保さんがふんぞり返って腕組んで待ち構えてて、
「貴様ら!最近たるんどるぞ!それでも薩摩兵児かっ!」
「す、すんもはんっ…」
んで、鞭とか持って、ずらりと並んだ藩士さんたちの横を歩きながら、
「なんだその立ち方は。腰を入れろ。ふふん、貴様、私に活を入れられたいのか」
「ひえっ」
てな感じで、ちょいとどSな鬼軍曹風の大久保さん。
こういうのも、けっこう似合う気がする。



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