用語集

【え】 5件

【エース (えーす)】
小娘は、剣道部のエースと呼ばれているけど、このエースという言葉の語源になったのは、アメリカの野球選手エイサ・ブレイナード。
幕恋当時は25才で、ちょうど大活躍中の時期。

たかが語源の話にすぎないけど、この単語がこの時代に生まれた意味は案外大きい。
それまでのスポーツは、貴族や富豪がお屋敷で社交儀礼として楽しむものや、農民がお祭りのときに豊作祈願で行うものなど、身分により明確に分けられていた。

ところが産業革命後、大量生産が基本の経済に社会が変化してくると、ある身分や村だけの閉ざされた社会で行うスポーツは古くなり、国民全体で楽しむスポーツが生まれてきた。たとえば、アメリカで最初のプロ野球チームができたのは1869年。サッカーの統一ルールができたのは、1863年。

エースという言葉が使えるスポーツには、社交上の力関係でなく、公正なルールにより勝敗が決まることや、選手の扱いは身分や出身地などに関係なく、実力で決められること、試合に参加する人だけでなく、観戦する人も大勢いて、皆で楽しむ競技になっていることなど、いろんな必要条件がある。

幕恋のころは、日本だけでなく世界全体で、スポーツや、他のいろんな日常的なできごとを、国民みんなが楽めるようになってきた時代なのです。


【英国策論 (えいこくさくろん)】
当時23歳のイギリス人通訳、アーネスト・サトウが横浜の新聞(雑誌?)ジャパン・タイムスに発表した論評。
本来は個人の資格で出した非公式なものだが「英国策論」とタイトルが付けられ、あたかもイギリスの政策のように喧伝されて広まったため、幕末の倒幕運動に非常に大きな影響を与えた。
特に西郷さんが、わが意を得たりと、あちこちで引用しまくったので有名。
国会図書館サイトにある(リンクは左下)のでネットで読めるけど、イギリス人がこれ書いたのかよ〜という文章でございます。

これ読んでもわかるけど、このサトウさん、えらく薩摩藩が好きらしい。
大雑把に言うと、徳川家は大名のいちばん大きい家に過ぎないのに、外国に対して日本国の主を名乗っているのは詐称であるって主張です。徳川幕府と薩摩などの雄藩は同列の扱いでいい、本来の国主である朝廷を中心に体制整えろって書いてあるのだ。

サトウさん、23才の一介の通訳なのに…つか、23才だからか?えらい過激…。


【笑顔写真 (えがおしゃしん)】
慶応2年11月24日は慎ちゃんが生涯でただ一回だけ写真館に行った日。
この日、慎ちゃんは3枚の写真を撮っている。
んで最近、原版の一枚が発見され、削られた跡があったために話題になった。

原版を持ってた菊屋峰吉の子孫の言い伝えによれば、削ったのは慎ちゃん本人。

慎ちゃんの膝の上に派手な模様の布があるので、これは女の人の袖じゃないか、しなだれかかれてニヤケて笑ってた証拠隠しに削ったんじゃないかと言われてんだけど、私には最初、こたつ布団か祭手ぬぐいに見えた。
なんかコジツケっぽくね?

この日、慎ちゃんが写真館のモデルの女性と写真を撮ったのは事実である。

私が慎ちゃんなら、こんなオバサンにしなだれかかれてもニヤケないけどね。
一緒にいるのは義兄の武平次さん。実は彼はこの日、慎ちゃんの父上が亡くなったことを知らせに来た。
つまり慎ちゃんはお父さんの死というショックを隠して、笑顔で写真を撮ったわけだけど、その理由は武平次さんに写真を土佐に持ち帰ってもらって、家族の皆に元気だよと伝えるためである。

そして2年前、慎ちゃんの脱藩を助けたもう一人の義兄が、抵抗運動で刑死している。
慎ちゃんが写真を手放す時、脱藩者を助けたと罪に問われないよう、武平次さんの写ってた部分を削って証拠隠滅したって考えても、不思議はないと思うんですけどね。どうなんでしょ?


【エレキテル (えれきてる)】
序幕で高杉さんが小娘に、一瞬で手紙や写真を送れる技術は未来にあるのか、それはエレキテル(電気)を使ったものなのだろうなと聞く。

実は、幕恋の1866年、実用可能な最初の大西洋横断電信ケーブルが敷設されている。
電信といっても、まだ電話はないので、モールス信号などを使って、電報を送る程度だけど、それまで船で手紙をやりとりしているだけだったヨーロッパとアメリカの間の情報伝達が飛躍的に速くなった。(まだ無線通信はできてない)

ちなみに日本で初めて電報が実用化されるのは、3年後の1869年(明治2年)。

ただしそれより15年前の、1854年(嘉永6年)2月のペリー来航時に、米国から幕府に電信機と蒸気機関車が送られ、それらを使った公開実験が行われている。
そういう進んだ西洋文明を見せられて、高杉さんの師匠の松陰先生は密航を企て、捕まるわけです。

別項目の「月世界旅行」もそうだけど、高杉さんの発言は思いつきの想像のように聞こえるけど、ちゃんと情報収集した結果なのだ。


【エンフィールド銃 (えんふぃーるどじゅう)】
龍馬さんや慎ちゃんが、薩摩の名前を借りて、イギリスから長州が4,300丁のエンフィールド銃を買うのを手伝った…というのが、薩長同盟の特に重要な点ですが、どれくらいの威力なんだろな…と思ったら、結構すごかった。

よく比べられるゲベール銃の有効射程が90m前後なのに対して、エンフィールド銃は10倍の900mくらいでも、ちょいと厚めの木の板でも撃ち抜く。つまり、約1kmぐらい先から撃たれても、人に当たったら大ケガをする。
まあ、この銃、ライフルですから。射程は長くてかつ正確。

ナイチンゲールが1854年のクリミア戦争の時に看護師として脚光を浴びたのも、この銃の技術の進歩で死傷者が格段に増えたことが背景にある。

添付した動画は、実際にエンフィールド銃を撃ってみてるところ。
ここではゆっくり装填してますが、慣れた兵士なら20秒で1回撃てます。
動画の最後に画面の隅にちらっと標的に当たったところが見えますが…この銃の前には立ちたくないなあと思いました。

なんでこれが気になってるかと言うと…。
こんなアブナイもの取引して、薩長が仲良くなりました。メデタシメデタシ…じゃやっぱ、まずいんじゃね?と素朴な疑問を感じるから。
いや…それ言っちゃおしまいと言えばそれまでだけど…。
剣で斬り合うより、よっぽど被害はでかいぞ、これ。



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