創 話

□Love me crazy
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玄関のドアが閉まりガチャリと施錠されたのとほぼ同時に掴まれた肩を後ろへ引かれ、振り向く途中で強引に唇を押し付けられた。
すかさず差し込まれた舌が内側の粘膜を舐め、上顎を擽り、その熱い舌に触れられた場所からじわりと伝染するように熱くなっていく。
性急な口付けは仄かにアルコールの味をさせながら、口端を濡らす唾液を唇ごと啜り、段々と呼吸を浅くさせて。

「、んっ」
「ぁは・・・」

荒々しく口腔内を行き交う舌を捕まえ、甘く噛んで窘める。

「珍しいな、酔ってんの?」

名残惜しそうに唇を離した松本は小さく、注視していなければ分からない程本当に小さく震えるように頷いた。
食事の席で飲んではいたが、酔う程ではない。
酔ったフリに気付かないフリをして、持っていた鞄を手放し身体ごと壁に押し付けると、薄く開いた唇に今度は自分から食い付くように口付けた。

「んんぁ、」
「っん・・・」

歯列がぶつかる程深く唇を重ね、僅かな隙間から息を継ぎ、吐息と唾液を混ぜ合わせ飲み込み合って、自ら絡み付いてきた舌を自分の口内へと引き摺り込むと、強く吸い、擦り合わせ、緩く噛み扱いてまた押し戻す。

「ん・・・ふ、ぁ、」
「っ、はぁ・・・」

蕩け合う唇を隅々まで味わいながら靴を脱ぎ捨て、絡み合い縺れ合って辿り着いた寝室の前、背後からきつく抱き竦められて、伸ばした手はドアノブまで届かずに。

「翔さん・・・」

呻くように呼ばれ、前へと廻された手がベルトを外すと、慌ただしい手付きでボタンを外しファスナーを下ろして、下着の中へ差し込まれた手が俺の中心を直に包み込んだ。

「せっかちだな」

苦笑混じりの言葉に、至近距離で交錯した視線は滾る欲を濃く滲ませて血液を騒めかせ、まさぐられている場所がジクジクと疼いて形を変えながら熱を溜め込んでいく。
浅くなっていく呼吸と上がっていく体温、早くなる鼓動を感じながら身体を捻り向かい合って、シャツの裾に滑り込ませた手で松本の脇腹を撫で上げると、胸で探し当てた突起を爪で掻いた。

「ぅあぁっ」

小さく声を上げて尖った突起から下へと降り、膨張している中心を撫で、布越しに揉みしだきながら顎から耳のラインを唇で辿り、耳朶を食む。
態と水音を立てて溝を舐め廻し、窪みに舌を突き入れて、耳に付けたままの唇で直接注ぎ込むように囁いた。

「なぁ、そんなに・・・」
「、んぁっ・・・はぁっ・・・」
「そんなに、我慢出来なかった?」
「ぁん、っあぁ・・・はぁ、ッんぁ・・・っはぁ、ァんっ、」

熱を溜め敏感になっている中心と聴覚を攻められて呼吸の乱れと喘ぎは徐々に大きくなり、焦点の合わない瞳は虚空を捉え、向き合った身体は壁に寄り掛かるように頽れ始めて。
動きの止まってしまった松本の手を下着から抜き取るとその場で廊下に押し倒し、下衣を下着ごと一気に引き下ろす。
大きく反り返り前兆で濡れているそれに、顔を傾け横から唇で挟み、歯を立てないように側面を擦ると、鼻に掛かる甘やかな声が頭上から聞こえた。

「ん、ふ・・・ぁあ・・・」

吐息を吹き掛けながら唇と舌で愛撫し、後孔に添えた指にそっと力を込めると、抵抗を見せながらも徐々に俺の指を受け入れ、次第に順応していく柔らかな粘膜を指の腹で丁寧になぞり、円を描くように入り口を拡げる。
増やした指をバラバラに動かし抜き差しを繰り返しながら、尖らせた舌先で屹立をチロチロと擽り続けると、先端から滴る雫に白が滲んで松本の指が俺の髪を掴んだ。

「っうぁ、はぁ・・・しょ、さ・・・っあぁっ」
「ん?」
「あっ・・・はぁ、もぅ・・・っ」
「何?どうして欲しい?」
「はぁ、っあぁっっ」
「ほら、言えよ」
「ぁはっ、・・・も、挿れっ・・・っはぁ、んっ」

快感を求める身体は浅い呼吸ともどかしさに波打ち、淫らに色付いて。
その姿にどうしようもなく煽られている自分を自覚しながら、内を探る指を引き抜き、取り出した自身を後孔に突き立て、熱く蕩ける胎内に深く沈めていく。

「っア・・・あぁ・・・」
「ッ・・・っ、はぁっ・・・」

最奥まで辿り着いた切っ先は根元まで熱い柔襞に包まれ、更に嵩を増し狭い器官を満たして、そこから伝わる甘い痺れが身体中の神経を伝い、吐息となって漏れた。
薄く汗を浮かべ身悶える松本の身体を見下ろしながら腰を引き、敢えて緩く小さな動きで揺する。
細波のような刺激は、中心に蟠り渦巻く熱を解放するには足りなく、薄く開かれた瞳が苦し気に見上げて、

「翔、さん・・・、んんぁ・・・ねぇ、」
「何?」
「はぁ、っ、もっと・・・」
「もっと、何?」
「うっ、んぁっ・・・はぁ、あぁ・・・」
「言えって、潤」

言い淀み、躊躇うように眉間に皺を寄せ背けた顔を、頬に充てた手で上向かせて覗き込むと、熱欲で潤む瞳に愉悦に染まる自分の顔が映っていた。

「・・・っ・・・もっと、奥っ・・・突いて・・・ぁっ・・・」

口元だけで薄く微笑い汗ばむ額に唇を落としてから、浅い場所を往き来していた切っ先を奥まで突き挿れる。
柔らかい粘膜を抉る度、焦らされた身体は待ち兼ねた快感に酔い痴れ、打ち付けられる衝撃に揺れながら嬌声を上げて。

「あっあぁっ、はぁっ・・・ぁんっ」
「っ・・・っはぁ、潤っ」

胎内の柔襞は収縮を繰り返して貪欲に楔を咥え込み、濡れた擦過感は噎せ返る程の快楽を齎しながら触れ合う場所全てを溶かしていく。
伸ばされた手を掴み指を絡めて強く握ると、享楽に喘ぐ松本が切れ切れに言葉を紡いだ。

「はぁ・・・はぁ・・・っしょ、さん・・・あぁ・・・ぁ好、き・・・ッ、」
「ん、ああぁ・・・っ」

衣服を身に付けたままの上体を密着させて首筋に顔を埋めて。

「っ、潤、愛してる・・・」
「あっっあぁ・・・翔っ・・・っもっと、言って・・・」

快感に溺れ、快楽を貪り、激しく交わり溶け合いながら乞われるままに好きだ愛してると繰り返す。
身体も心も、一番深い場所で繋がるように。

「はぁっ・・・愛してる・・・潤っ」
「あっあっ・・・っ、あああっっ・・・」

高く啼き背を浮かせて松本の熱が迸ったのと同時に、絡み付く胎内へと俺も白濁を刻み付けた。

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

抱き伏せたままの体躯は乱れた呼吸で俺の耳元に唇を寄せて。

「・・・もっと・・・して・・・翔さん、まだ・・・」

足りない、と続いた言葉に、頷く代わりに俺はまた唇を重ねていく。


もっと、ってもっと言って。
もっと、ってもっと求めて。

素直に甘えられない彼の、こんなにも不器用でこんなにも愛おしい甘え方。

もっと求めて欲しくて。
もっと求められたくて。

酔ったフリの彼の策略に、甘えているのは、俺の方。







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