創 話

□From Dusk Till Night
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寝室に移動してベッドに上り、奪うように唇を重ね合った。
零れる吐息を交え、温かな肌に触れて、触れ合った場所から全身に波及して一点に収束していく熱を感じながら互いの衣服を取り除き、床に落とす。
全てを取り払った智くんの首筋から肩にかけてを唇と舌で辿り、胸の突起に軽く爪を立てると鼻にかかる微かな声を漏らしてその身を捩らせた。
胸に留まり緩やかな刺激を与えていた手をゆっくりと肌に沿って降ろし、腰骨を撫でるように後ろへ。更に下へと降りて、今はまだ硬く閉ざされているその場所に触れる。
中に押し入ろうと指先に力を込めると、密着している身体が僅かに強張り、脇腹を彷徨っていた智くんの手が止まった。

「好きだよ智くん、好きだ」

言葉と共に額や瞼、鼻の頭へと軽く触れるだけのキスを落としていく。すると、それに応えるようにして俺の背に触れた彼の掌から心地よい体温が伝わってきた。音を立てながら鼻から頬へ、そして耳へ。

「愛してる、智」
「っ・・・ぁんんっ」

吐息ごと注ぎ込むように耳元で低く囁くと、強張る身体が緩んで入り口を探っていた指の先が中に飲まれた。
それでもまだ抵抗を見せる柔襞を傷付けないよう慎重に辿り、徐々に入り口を解していく。
もっと奥に触れる為に腰を引き寄せて脚を跨がせると、先程よりも深い場所まで届いた指で殊更丁寧に、ゆっくりと時間をかけて拓いていった。

「んん・・・、あぁっ・・・」

後孔を探る指はそのままに、眼前で色付く胸の突起に吸い付き、軽く歯を立てて舌で転がす。
堪えきれずに漏れた甘い声が吐息に混ざって、微かに肌を擽った。
異物感に慣れてきた智くんの胎内が抵抗をやめても、執拗に撫で、押し広げ、溶かし続けると、その強くはない刺激に肩に置いた手で身体を支えながら歯痒そうに身じろぎ、まだ触れていないのに張り詰めて息衝く智くんのものが、二人の身体の狭間でその存在を主張していた。

「っ・・・ぁ・・・――ッ、・・・はぁっ・・・」

空いている方の手でそれを掴み、先端に指を這わせ、爪で窪みを掻く。指先を濡らす透明な蜜を塗り広げるように掌全体で緩々と擦り上げると、請るように腰を揺らした。

「あぁっ、はぁ・・・ぁんん、翔、くん・・・」
「智くん、自分で挿れられる?そのまま、ゆっくりでいいから」

屹立する自身に手を添えて智くんを誘うと、時折眉を寄せて息を潜めながら、自ら少しずつ腰を落としていく。
充分に解しておいたそこは根元までを従順に受け入れ、包み込み、腰をくねらせて熱く蕩ける内襞に昂りを押し付けると、愉悦を滲ませた声が鼓膜を震わせ、背筋を走る甘美な痺れに思わず息を飲んだ。

「あっ、んん・・・はっ、あっ、ああっ・・・!!」
「っ・・・イッていいよ、智くん」

握る手に力を込めて智くんの自身を扱き、もう片方の手を支えにして下から大きく抉るように突き上げると、俺の手の中で脈打つ彼の自身が一層質量を増して。
追い立てるようにそれぞれの動きを早めると、肩口に顔を埋め、乱れる呼吸と襲い掛かる快感に全身を震わせながら、智くんが白濁を弾けさせた。

「あぁっ、っ・・・!!・・・はぁ、はぁっ・・・」

吐精し脱力した身体を仰向けに横たえさせ、まだ息の整わない身体に自身を突き挿れ、再び揺さぶる。
奥へと打ち付ける度に組み敷いた肢体は力無く揺れて、言葉は意味を成さずに喘ぎへと姿を変えていった。

「はぁ・・・ぅっ、さとし、くん」
「は・・・あぁ・・・ん、んんっ」
「智くん・・・、いい・・・?」
「あっ、あぁ、ん・・・はぁ、き・・・いっ、あっ、ああっ・・・はぁっ」

ずっと胸に渦巻いていた感情が、堰を切ったように溢れ出して暴走する。
伝える事の出来ないそれを、智くんの内に直接刻み込むようにして奥深くを犯し、縋り付くように掻き抱いた身体に好きだ、愛してる、離さない、と譫言のように繰り返した。
言葉を投げ掛ける度、まるでそれに反応するかのように内襞が騒々と波打ち、締め付けて、

「―ッさとし、く・・・、・・・っっ・・・!!」

限界まで熱を溜めた切っ先を奥深い場所まで送り込んで、咥え込むように収縮する智くんの中へと、凝っていた劣情の証とやり場の無い想いを注ぎ込んだ。



穿っていたものを引き抜いて、乱れた呼吸を落ち着かせる。
開いたままのカーテンが視界に入ったが、今更閉める気にもならなかった。

「水、欲しいでしょ?取ってくる」

ベッドを降りようとした俺を智くんが制して、少し横にずれて俺の分のスペースを隣に空けてくれる。

「いらないの?」
「うん、いい」

互いに吐き出したものを簡単に拭い、そのまま並んで薄暗くなった天井を見上げながら他愛もない会話をした。
今日乗った電車の事、駅で見掛けた人の事、行く予定だったレストランの事。なんとなく映画の内容に触れる事が出来ずに、会話が途切れた。

室内が静寂に覆われてから、どれくらい経っただろう。
不意に、投げ出していた左手を温もりが包み込んだ。
優しい棘がまた、心に突き刺さる。
そっと隣を窺うと、智くんはやはり何も言わずに天井を見上げたままで。
それぞれの指に自分の指を絡めると強く握り返して、視線を向けられた。
逸らす事を赦さない強い視線と、強く握られた左手。
薄く開いた唇が僅かな光を反射しながら、



「       」



短い言葉を紡いで。
気が付いた時には吸い込まれるように自分の唇でそれを塞いでいた。

「んっ、っ・・・」
「・・・は、・・・んんっ・・・」

押し付けた唇を隙間無く重ね合わせて、呼吸する暇もない程に奪い合って。
差し挿れた舌は絡め取られて押し返され、侵入してきた智くんの舌に口内を掻き乱され、翻弄される。
歯列がぶつかる硬質な音と衝撃が頭蓋に直接響いて、掬い切れずに溢れた唾液が頬を伝い、息苦しさに離れた二人の間を細い糸が繋いで、消えた。

「・・・うっ・・・はぁ、・・・」

智くんの手が既に新たな熱を溜め始めていた俺自身に触れて、器用に動く指が欲情を煽って加速する。
身体を起こして彼に覆い被さると、欲に濡れたそれを白濁にまみれた彼の後孔に躊躇う事なく捩じ込んだ。

「ああっ・・・あっ、んんっ、・・・く、っ」
「っ・・・はぁ・・・ぅ、」

二つ身体の境界が分からない程に深く交わって、与える快感と与えられる快感の両方に溺れて求め合う。
行為に没頭する事で、胸を刺す棘に気付かないふりをした。

喘ぎ混じりの荒い呼吸の所為で開いたままの唇、自ら快楽を追って艶かしく揺れる腰、穿った切っ先が敏感な箇所を突く度に背を仰け反らせる智くんの矯態に視覚を犯され、肌と肌がぶつかる乾いた音と、繋がった場所が奏でる濡れた音、智くんが発する声にならない声が室内を満たし、聴覚を犯す。

「あ、あっ・・・んんっ、あぁっ、しょ・・・く、もう、ダメ・・・あっ、あっ・・・」

押し寄せる快楽に流されるまま限界へと昇り詰めていく智くんの中から自身を引き抜くと、身体をうつ伏せにして腰を高くさせ、曝されたそこに突き立てた自身で後ろから一気に最奥までを貫く。

「っあああっっ・・・!!」

背を仰け反らせて一際高く啼いたその姿に、俺の中で何かが音を立てて弾け飛んで、握り締めたシーツに顔を埋める智くんを後ろから容赦無く攻め立てた。

「・・・っや、止め・・・もう、あっ、あぁっ・・・」
「智くんっ、愛してる・・・はぁっ・・・あぁっ・・・智・・・っ!!」

強過ぎる刺激に智くんが嫌だと首を振っても、もう止める事なんて出来なかった。
悲鳴じみた矯声をあげる智くんの腰を両手で掴んで固定し、力任せに何度も奥を突く。
衝動に駆られるまま激しさを増して、熱く濡れて強く締め付ける智くんの中に欲を放つと、それとほぼ同時に、智くんも掠れた声と共に達して、そのまま意識を手放した。

途端に脱力感と疲労感に襲われて、俺もベッドに沈み込む。
堕ちていく意識の中で触れた智くんの手は、変わらず温かかった。





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