創 話

□zips
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ゆっくりと息を逃がしながら崩れそうになる膝に力を篭めると、寄り掛かったドアに衣服の擦れる乾いた音がした。
ドア一枚を隔てた廊下では、スタッフ達が往き来する声や足音が微かに聞こえる。
部屋の中とは言え、ここは自宅ではない。
外の話し声や物音を聴覚が捕らえる度、ここが自宅ではなくツアー先のホテルである事を嫌でも認識させられた。

「っ・・・」

下肢に纏わり付くザラついた舌と明らかな意思を持って動く指、包み込む口腔の濡れた感触に手の甲を自分の口に押し当てて上がりそうになる声を抑える。
それでもせり上がってくる快感に堪えきれず身体を捩ると、熟れた熱塊を深く咥え直されて根本から先端までをゆっくりと強く吸い上げられた。
音を立てて一度離れた後、尖らせた舌で敏感な窪みを抉るように擽られて思わず声が漏れる。

「ぁん・・・」
「声、出すなよ」

外に聞こえる、唾液に塗れた俺のものを浅く咥えてそう言う翔さんに、ならばこんな場所でしなくてもいいのに、と思いつつも今の自分にはどうする事も出来ない。

「、んっ・・・ぅ」

腰の奥から快感を引き摺り出されていく感覚に、何かに縋らずにはいられなくなって指先を伸ばし、下肢に寄せられた翔さんの髪を手繰るとより深く飲み込まれて殊更丁寧に舐め上げられた。

「・・・っ、んぁ」

時々当たる硬い歯と、熱くて柔らかい粘膜。
緩慢に続けられるそれに、熟れきった肉塊は先端から蜜を溢しながら脈打っている。

「翔、さん・・・」
「イキたい?」

そう聞かれた時、ドアの向こうで聞き慣れた声がした。

『ね、せっかくだしさぁ、飲もうよ』
『うぅん?今から?』
『そう、今から』
『んー、でもなぁ・・・ニノは?』
『相葉さん、今日は一緒にゲームやるって・・・』
『じゃあリーダーの部屋でみんなでやればいいじゃん』
『え、俺の部屋?』
『あんたねぇ・・・』

近付いて来る声はやたらとテンションの高い相葉くんといつも以上に眠そうなリーダー、それと迷惑そうに応じるニノ。
息を潜めて、様子を窺う。
しかし遠退いていく筈の声は、そのまま通り過ぎてはくれなかった。

『そうだ、どうせなら松潤も誘う?ここ松潤の部屋だよね?まだ起きてるかな?』

声と共に近付く気配。
見下ろす俺の視線と見上げる翔さんの視線がぶつかる。
視線を絡ませたまま翔さんの口角が挑発的に上がり、そしてそのまま再び俺自身を含んだ。

「・・・っっ、」

裏筋を擦り、括れをなぞって、巧みに這わされる舌。

『止めときなよ、もう時間も遅いし』

喉奥まで飲み込み、全体を緩く甘やかに咀嚼して。

『じゃあ翔ちゃんは?』

顔を前後に動かしながら纏わり付く唾液と滲む粘液を吸い取る。

『翔くん仕事あるって言ってたよ?』

絶え間なく感じさせられる刺激にドア越しに聞こえる三人の会話がぼんやりと霞み、 止めさせようと力を込めた手はすぐに意味を失くしてしまった。
下ろした視線の先、赤い舌と濡れた唇で張り詰めた肉塊を貪る翔さんから、目を逸らせない。

「っ・・・っっ、」

ドアの向こう側の日常と、ドアのこちら側の淫らで不埒な行い。
意識した途端一気に勢いを増した劣情に、身体が貪欲に刺激を追い始めた。
僅かに残った理性が蝕まれていくのを拒むように、首を振り、奥歯を噛み締める。
それでも漏れてしまいそうになる声を必死で抑えて、苦しくなる呼吸。
狂おしい快楽に涙が薄く滲んで、翔さんの姿が滲む。

『しょうがない。じゃあ、三人で』
『結局飲むのかよ』

遠ざかって行く声と気配に僅かに気を緩めた瞬間。

「、ぁんっっ」

掌で全体を擦りながら不意に強く先端を吸われ、全身を衝撃が駆け抜けた。
びくりと腰が跳ね、翔さんの口の中で弾ける熱。
体液の溢れ出る感触にすら身体が打ち震えて、崩れそうになる膝に、壁に壁に押し付けた。

『今、何か音しなかった?』

ドアの向こう、少し離れた場所から聞こえる声に身動きの取れないまま静かに浅い呼吸を繰り返す。

『そう?』
『気のせいじゃない?』
『そうかなぁ?・・・ま、いっか』

そう言ってまた離れて行った気配に、壁に凭れたまま深く息を吐くと、立ち上がった翔さんの掌が頬に触れて、親指が目尻を拭う。

「泣く程良かった?」

寄せられた唇で内緒話のように囁かれて、そのまま口付けられた。
薄く開いた隙間から差し込まれた舌先に自分のそれを絡めて、粘る残滓を舐め合う。

「んっ・・・ん、」
「このまま、したい」
「ぁ、っ・・・ぁん」
「ダメ?」

唇を重ねたまま蕩けてしまいそうな声で甘く求められて、抗う事も出来ずに絡め取られていく。
いいよ、と吐息に乗せた言葉はすぐに飲み込まれ、より深く、激しい口付けで返されて。
身体ごと全部委ねるように、その背中に腕を廻した。






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