鋼殻のレギオス

□対面
1ページ/3ページ

突然だが、クラリーベル・ロンスマイアは三王家であり天剣授受者、ティグリス・ノイエラン・ロンスマイアの孫である。
そしてまた、一人の少女でもあった。

「まったく恐ろしいものですね。恋の力とは…」
通常、三王家の人間や天剣授受者は他都市に行くことはできない。しかし、彼女の今立っている場所、それは………

「やっと着きました。ここがツェルニ……」

彼女は、学園都市ツェルニにいた。




1ヶ月程前、クラリーベルは王宮へと赴いていた。目的は勿論、己のなかに渦巻く感情を解決するため。
アルシェイラが嫌いとかトロイアットが憎いとか言うわけではない。
アルシェイラに用があるわけだが、話をしに来ただけだ。

「行きなり来てどうしたの?」
「陛下にお話があります」
「何かしら?もしかして胸が成長した?」
「違います」
「あら、そう。ま、それはそれで需要があるらしいから良いんじゃない?私好みではないけど」
「貧乳で悪かったですね!これでも成長してるんです!!」
アルシェイラの己を主張しまくってる胸を睨み付ける。

「それと、話したいことはそんなことじゃないんです」
「はぁ、つまんないの。で、なんの話?」
「私を、学園都市に留学させてください!」
「……」
暫しの間沈黙が流れる。そしてアルシェイラは一言、
「良いわよ」
ドタッ!!
アルシェイラの傍に使えていたカナリスが転けた。

「良いんですか陛下!!彼女は三王家の人間ですよ!!」
「判ってるわよ、そんなこと」
「そんなことって…」
カナリスは肩をおとした。一方クラリーベルは、止められると思っていたため唖然としている。

「クララ。本来ならカナリスが言ったように、三王家の一員であるあんたをグレンダンから出すわけにはいかない。でも今回は特別。あんたには任務としてツェルニに行ってもらうわ」

「任務…ですか…?」
「そ。ちょっと狼面集の動きが怪しくてね。やつらの事に詳しくて、実力もあり学園都市に入ることが出来る年齢を考えると、必然的にあんたになるの」
つまりは最初からツェルニに行かせるつもりだったと言うことだ。

「そんで、狼面集の駆除もそうだけどもう一つ任務を与えるわ」
「もう一つ?」
「グレンダン」
『なんだ』
アルシェイラの目の前にグレンダンと呼ばれた獣が現れた。
「刀を一本頼むわ」
「…分かった…」
少しの間の後、グレンダンは了承し、次の瞬間にはアルシェイラの手元に刀が現れた。

「ほいっ」ポイッ
「へ?」
いきなりだった。アルシェイラは刀をクラリーベルに投げたのだ。いきなりの事に驚きつつも、なんとかキャッチする。

「それをレイフォンに渡しなさい。もしかしたらあんただけじゃ対処しきれないかもしれない。だから、必要と思うならレイフォンに全てを話してもいいし、しなくてもいい。そして協力してもらいなさい」
「あ、あの、陛下?この刀は一体?」
「ん?あぁ、それはね、電子精霊が己の身を削り出して造ったもの。天剣とまではいかないけど、レイフォンの全力の剄に耐えれるはずよ」
そんなものを電子精霊が作ることが出来ることを初めて知りクラリーベルは驚く。しかし一つの疑問が思い浮かぶ。

「レイフォンさんにこれを渡していいんですか?もう天剣授受者ではなく、グレンダンに戻ってくることが出来ないレイフォンさんに」
「私は、レイフォンが天剣授受者になったとき、ついに私の剣が揃ったと思ったのよ。でもレイフォンがグレンダンを出ていくとき、彼は私の剣では無かったのかもしれないと思ったわ。でもそうじゃなかった。レイフォンは私の剣でもあり、もう一人の剣でもあったの。だからこそ、来たるべき戦いの時にレイフォンにいてほしい。だから渡すの。ま、都市民から反発があった時はどうにかするわ」
クラリーベルはその言葉がとても嬉しかった。レイフォンに会うことが出来る。もしかすればレイフォンは帰ってこれるかもしれない。そうすれば卒業後もずっとレイフォンと一緒にいられる。クラリーベルはその喜びを心で噛み締めていた。そして旅立ちを楽しみにしていた。
だが、アルシェイラの言葉で楽しみが半減してしまう。
「あ!手続きとか面倒いから、あんたがツェルニに着いてからどうにかしなさい。仕送りはこっちからは出さないから。ティグ爺にでも頼みなさい」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ