短編カプ
□高み
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宍戸さんがレギュラー落ちしたあの日から、俺はいつも宍戸さんと一緒に帰ってる。理由は俺が宍戸さんの特訓を手伝ってるから。
今日もまた特訓を終え、帰り支度を始める。
「いつもすまねえな」
そう言って缶ジュースを差し出してくれる宍戸さん。お礼を言ってからありがたく受けとる。
「宍戸さんのお役に立てて何よりです。」
そう言って微笑むと苦笑いで返された。
「宍戸さんは俺の恩人ですから」
「あ?」
訳がわからないといった顔。それもそうだろう。
中学に入って始めたテニス。延び続ける身長とは裏腹に一向に上達を見せない。同じ初心者だったはずの人間も上達していき、いつの間にか部内で一番下手になっていた。
焦りと情けなさが続いていたある日、俺は屋上に呼び出された。
「鳳!来てくれたか!」
「先輩、話ってなんですか?」
「俺がお前を呼び出す理由なんて一つだろう。頼む、バスケ部に入ってくれ!」
この先輩に呼び出されるのは初めてじゃない。以前からずっと勧誘されていた。
いつもなら即答で断るのになぜか今日はそれができなかった。
「こう言ってはなんだが…お前あんまり上達してないんだろう?運動神経のあるお前がそうってことは向いてないんじゃないか?」