小説書きに100の質問

□小説書きに100の質問 #1〜30
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+小説書きに100の質問+ #1(1〜30)


「小説書きに100の質問」配布元はこちら:
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/8814/ 


#1

1
まえがき(あなたの意欲をどうぞ)。

「遅刻よ」
 待ち合わせ場所は、この街でも指折りの巨大ホテルだった。1F、カジノの隣のレストランの、表通りがよく見える席に金髪をショートカットにした若い女がひとりで座っている。
 ガス入りのウォーターを口に運びながらメニューを広げていた女が顔を上げた。
「あなたが依頼人ね?」
 この街唯一の女探偵。依頼はここのディーラーづてに行ったので、単に『代理人(エージェント)』と名乗る彼女に会うのは初めてだが、年はおそらく20代半ば。オレより10は違うまい。
 デニム地のジャケット、チューブトップにジーンズというカジュアルな格好でも、この国ではカジノへの入室を断られることはない。かくいうオレも、このガタイの良さと黒の半袖Tシャツ、黒の革パンに白いファーのコートを引っ掛けて角刈り頭とくれば、ギャングかヤクザかとたいていの店で恐れられるが、流石にここの従業員は教育が行き届いているのか、笑顔を絶やすことはなかった。
「10分なんて誤差のうちだ」
 彼女はあきれたようだったが、それについては何も言わない。
「料理はどうするの?」
「アンタと同じでいい。それとビール」
 彼女はメニューを閉じてウェイターを呼んだ。
 注文を終えると、興味深々な目を向ける。
「御堂雪藍について知りたいっていうのはあなた?……珍しいわね、今時直接会って報告を求めるなんて。メール1本ですむ話なのに」
「余計なことはいい。アンタが本当に評判通りの腕ききかどうか、聞かせてもらおうじゃねえか」

2
あなたのペンネームを教えてください。
「標的(ターゲット)の名前は御堂雪藍(ミドウセツラン)。それでいいのね?」

3
小説の中の人物として○○○○(←あなたのペンネーム)を描写してください(自己紹介)
「地味な女よ。服装も地味、ここと違ってね」
 きらびやかなシャンデリアに、つるつるに磨かれた床。オレンジを基調とした椅子とテーブルに、ふんだんに金が張られた壁や柱。このホテルの他の場所と同様、成金趣味丸出しだ。カジュアルからフォーマルまで、いろんな格好の老若男女が、ランチの時間でもあり賭け事の合間に一息ついている。
「でもそれにごまかされちゃダメ。あの女にはウラがあるわ」

4
あなたの職業は?
「それくらい、知ってるクセに」
 エージェントがオレを睨んだので、意地悪く唇を歪めて答えてやる。
「広い意味でのオフィスワーカー、ちょっとした専門職といったところだろう」
 だがそのウラの顔は、見えないものをいかにも存在するように見せかける詐欺師だ。

5
あなたのバイト遍歴を教えてください(あれば)。
「学生のときは販売の仕事をいくつかしていたみたいね」
「……お待たせしました」
 姿勢のよい、黒髪の東洋人のウェイターが前菜をオレたちの前に置き、ビールのグラスを添える。年はオレと同じくらい、加えてこの落ち着いた物腰からすると、ここのウェイターのチーフかも知れない。
「プロヴァンス風小野菜の詰め物でございます」「ありがとう」

6
小説書き歴は。
「とりあえず乾杯でもするか?」「そうね。彼女が副業を始めたのは9歳のときよ」「9歳!ずいぶん早いな」「今時珍しいことじゃないわ」代理人は金髪を揺らして首を振った。すこぶる腕が立つ、とここのディーラーから聞いて依頼したのだが、この街で、女ひとりで探偵をするのは並大抵の苦労ではないだろう。

7
小説書き以外の趣味を教えてください。
「他にターゲットが興味ありそうなのは、サッカー観戦と洋裁ね。サッカーもTVで見るばかりのインドア派よ」

8
好きな小説のジャンルは。
「ミステリと歴史物、あとアクションシーンがあるものが好きなようね。マンガでもそういうものをよく手にしているわ」

9
好きな作家は。
「久美沙織、宮部みゆきってとこみたいね」

10
尊敬する作家は。
「同じこと聞いてない?」女探偵はズッキーニの肉詰めを食べながらこちらを睨んだ。

11
好きな小説は。
「ターゲットの部屋に忍び込んだ時に本棚を見たけど、いろいろあったわよ。……そうね、特に1冊あげろと言われたら、宮部みゆきの『蒲生邸事件』かしら。立間祥介訳の『三國志演義』も並んでいたわよ」

12
好きな映画は。
 「『タイムマシンはドラム式』って映画をいたく気に入って、職場の同僚にも勧めたそうよ。ハラハラして、アクションがあって、ハッピーエンドで終わるところが自分でも物語で目標にしているのですって」
 オレは思わず口笛を吹いた。「よくそんなところまで調べたな」「職場の同僚にちょっと接触したのよ。経費は別に請求させてもらうわよ」

13
好きな漫画・アニメは。
「これは本棚をチェックしたから簡単な質問ね。アニメは『名探偵ホームズ』『メダロット』『ロックマンエグゼ・ストリーム』『お願いマイメロディ』クレイアニメで『羊のショーン』『ニャッキ!』。『さよなら絶望先生』、これはマンガも揃えていたわ。他にマンガでは桑田乃梨子『おそろしくて言えない』川原泉『ブレーメン』椎名高志『MISTERジパング』ゴツボ×リュウジ『ササメケ』ね」
「……すごい情報収集力だ」目を丸くするオレを見て、代理人は艶然と笑った。「ディーラーから聞いてないの?私は“凄腕”の探偵だ、って」

14
好きなドラマは。
「ターゲットは、ドラマはほとんど見ないわよ」オレは口に運んでいたビールを飲みこんでむせた。「そうなのか?」「そのかわりゲームをするわね。逆転裁判、戦国無双、見るだけなら格ゲーも」

15
良く聞く音楽は。
「よく聞いているのはfmね。そこから派生してJ-POP、少し洋楽、アニソン…気に入ったら何でもいいみたいよ」


16
心に残る名台詞と、その出典は?
「机にメモがあったわ。【1場の夢は1巻の書物なのだ、そして書物の多くは夢に他ならない】」「何だそりゃ」「ウンベルト・エーコよ。『薔薇の名前』。映画にもなったけど知らない?」

17
月に何冊くらい本を読む?
「彼女、今はほとんど読んでないわよ。読むとなったら1日1冊でも読むようだけれど」

18
小説以外ではどういう本をよく読みますか。
「しばらく尾行もしたわ。週に1回はコンビニに行って、サンデーを読むのがターゲットのお決まりよ」「特に目を通している作品はわかるか?」「バカにしないでよね」女探偵はグサリとフォークを肉詰めに突き刺した。「『絶対可憐チルドレン』よ」「おみそれしました」オレは両手を軽く上げた。

19
読書速度は速い方ですか遅いですか。
「さっき言ったでしょ」

20
あなたは自分を活字中毒だと思いますか。
「だと思うわよ?ターゲットは食事のときも、TVがついてなければ字を探しているから」

21
執筆に使用しているソフトは。
「基本、紙とエンピツね。それからPCのワード。仕事も含めて1日中ペンを握っているわよ彼女。手から離れないみたい。ビョーキなんじゃない?」

22
初めて書いた小説のタイトル・内容。
「これはわからなかったわ」「おや、凄腕のエージェントがそんなのでいいのか?」「ターゲット自身が忘れてるんじゃ調べようがないでしょ。それより、あなた何で彼女のことを知りたがるの?」
「前もって相手のこと知っとかないと、命は頂けないだろ」オレは見せつけるようにニヤッと笑ってトマトにかぶりついた。
「あなた殺し屋なの?」「そう呼んでくれて構わない」

23
小説のタイトルはどうやってつけていますか。
「基本が二次創作だから、オフィシャルのサブタイっぽくしたり、洋楽・邦楽のタイトルをもじったり、単にインスピレーションだったり、の場合があるようよ」

24
あなたが書く小説のジャンルは。
「本棚に今までの作品が並んでたけど、やっぱりミステリになるのかしらあれは。ハラハラとドキドキと謎とアクションは定番ね。笑いの要素には決定的に欠けているわ」

25
一人称と三人称、どちらで書くことが多いですか。
「三人称がほとんどみたいよ」
「お待たせしました」さっきと同じウェイターが、パンの籠と皿を置く。身体を鍛えるのが趣味なのか、腕を曲げるとスマートな制服が少々きつそうに張ってしまっている。
「本日のメインディッシュ、子羊のもも肉のローストでございます」「ありがとう」

26
短編と長編、どちらが多いですか。
じっくりと焼かれた子羊は柔らかく、力を入れることなくナイフで切り分けられる。
「長編が多いわね。学生のころにルーズリーフで100ページ書いても終わらなかった話が今でも放置されていたわよ」  

27
どのくらいのペースで小説を書いていますか。
 女探偵は、目にかかった金髪を払ってビールを飲んだ。「手からエンピツが離れないんだから、四六時中なんでしょ」ウェイターを呼び、2杯目を頼む。人のおごりだと思って遠慮がない。

28
ストーリーと登場人物、どちらを先に決めるか。
「二次創作がメインだから、ジャンル・人物・ストーリー、になるのかしら?」

29
ストーリーはどういう時に思いつきますか。
「ボーッとしている時みたいね。昔の中国の文人も言っているわ、アイデアを思いつくのは『馬上、枕上、厠上』だ、って」「殺すならその時が狙い目だな」

30
ストーリーはどの程度決めてから書き出しますか。
「OPからEDまで字コンテ固めないと、あのタイプは書かないわね」
 隣のテーブルに座っていた、丸いサングラスをかけたでっぷりと太った小男が、鉛筆片手にキノ(ナンバーズ)のカードを塗りつぶしていたが、ウェイターにチップを渡して提出を頼む。
「暗殺も同じだ。下見をして、接触から逃走まで考えておかないと成功しない」




#31〜へ続く。

小説書きに100の質問 #31〜70

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