ベイカー街

□イントロダクション
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【イントロダクション】




 朝のラッシュアワーを過ぎ、深夜勤のバイトから帰って来たジョンは、PCの電源を入れ立ち上がるのを待っていた。
 シャーロックは事件もないのにもう起きていて、パジャマにガウンを引っ掛けた姿で、一人掛けの椅子に膝を抱え、素知らぬ顔でバイオリンを爪弾いている。

「……シャーロック」

 コーヒーカップを手に、パソコンへ屈み込んで画面を見たまま呼び掛けると、彼もこちらも向かず、ん?と声だけで応える。

「ひとりあそびをしただろう」
「!!?」

 びきっと探偵が固まった。

「君が僕のPCに触るのはそういうサイトを見るときだけだ。履歴は何もないけど、僕のいない間に電源の入った記録がある−−新しくソフトを入れたんだよ、ちょっと気をつけないとと思ってね」

 椅子の角度から、自室ではなくここで使ったのもわかると言って、ジョンは振り向いた。

「悪い子だな……自分だけスッキリした訳だ」

 固まったままのシャーロックに圧しかかり、耳をくすぐる。

「したい時は僕に言えよ。ひとりより二人の方が気持ちイイって、わかってるくせに」
「……スッキリなんて……する訳ないだろ……!っ君いなかったじゃないか……!///」
「じゃあ今言ってよ……『したい』って」

 深い口付けに促され、やっとの思いでささやく。

「ジョン……その……っ、し、たい」
「『我慢できない』」
「ジョン!」

 真っ赤な顔で睨んでも、夜勤明けの彼はどこ吹く風だった。

「じゃあこのままでいいの?」

 パジャマの合わせから胸元に手が這い、既に硬いソレに触れる。摘んで遊ぶと、シャーロックはビクッと身体を震わせた。

「あ……!」
「何て言うんだっけ?」

 首筋を舐め上げると、赤く染まった目元と潤んだ瞳がこちらを見た。

「っ我慢……できない……!」

 ぎゅっとしがみつかれ、ジョンの胸も跳ねる。

「シャーロック……好きだよ」

 ありったけの優しさをこめてささやき、唇を重ねる。答えるようにシャーロックの腕が首に回り、柔らかい舌が絡まる。

 感じる所を的確にくすぐるジョンの指に、耐えられず息が乱れる。

 深く互いの舌を絡め、シャーロックのこぼす吐息が甘さに染まると、ジョンは唇を離して尋ねた。

「ここでいい?それともベッドまで行く?」
「……そこ」

 ちょっと拗ねたように唇を尖らせ、目をそらすシャーロック。ジョンはすぐに理解した。
 椅子では十分に愛し合えない、でも自室に行くまで待てないほどには熱くなっているらしい。

 シャーロックを首にすがらせたまま、右腕を彼の膝裏に通して抱き上げる。

 依頼人に座ってもらうソファに横たえると、白い首筋を撫でパジャマのボタンを外していく。全て取り去り、現れた肌が小さく震えるのを、なだめるように口づける。ジョンも服を脱ぎ、身体を重ねた。

 ジョンの重みに、シャーロックは安心したように吐息をつき力を抜く。

「好きだよ……シャーロック」
「うん」

 心地良い音楽を聞くかのように、探偵は薄く微笑み、ジョンの首筋に擦り寄る。
 その素直さにジョンは含み笑った。

「誘ってるの?」

 とたんにシャーロックの目元が染まり、キッと鋭くジョンを睨む。

(そんな顔したって……そそられるだけなのに)

 苦笑を加え、なめらかな内腿に手を這わせる。シャーロックはびくっと震えた。

 首筋にそっと跡をつけ、きめ細かい肌を味わうように鎖骨から胸元へキスを落とす。

「は……あ、ん……ジョン……っ!」

 舌を彷徨わせていると、うっとりと声を上げていたシャーロックが、不意に息を詰める。
 薄赤く色づくそれに唇が触れたからだ。

「感じやすいんだな。そんなにしたかった?」

 舌と手で愛していると、彼自身が熱くなってきたのを重ねた身体に感じる。

「バカ……言うなっ」
「どうして?君の身体はこんなに正直なのに……。僕も君が欲しいよ」

 形を成しはじめた腰を彼に押し付けると、シャーロックは一瞬震え身体を固くしたが、下腹部を吸い上げ印を散らす頃になると、何気なさを装い右足がソファの外に落ちる。

「まだ早いんじゃない?」

 焦らすように内腿に痕を残していると、快楽に潤んだ瞳がジョンを睨む。

「嫌……だっ、ジョン、こっち……!」
「まだだよ」

 耐え切れず中心に誘う手をかわし、熱い吐息に問いかける。

「なあシャーロック。誰を思ってひとりあそびしたんだ?」
「!」

 からかう笑みを消し、胸の痛みをこらえてささやく。

「もしかして……彼女かい」
「!!」

 次の瞬間、左の足裏キックを喰らい、ジョンはソファから落ちた。

「何するんだっっ!」

 見上げると、シャーロックの瞳は滲んでいた。

「君は!君は僕を疑うのか!僕が必要とするのはたった1人だ。君の他には誰もいらない!たとえこの先僕がどうなっても……君は一生、僕のことだけ考えてろ!」
「……それは僕が言うことだろ。まあ……ゴメン。鎌かけて悪かったよ」

 髪を撫でてキスを落とすと、抱きついたシャーロックが腰を擦り寄せる。

「ジョン、もういいから早く……っ」

 密着する身体、耳にかかる押し殺した息遣い。
 腰から甘い疼きが這い上がる。
こみ上げる愛しさに、ジョンは耳元へとささやいた。

「大好きだよシャーロック……愛してる」

 うなずき、ぎゅっとしがみつく彼自身を擦り上げると既にそれは濡れていて、卑猥な音を立てる。

「あ……ああっジョン、ジョン、ジョン……!」

 ビクン、と大きく震え達したシャーロックのそれを、掬い上げ後ろへ塗り込める。

「……力抜いて」
「や、ぁ、ん……、ジョンっ、くっ……ああ……っ!」

 彼に1番近いのは自分。彼を全て知るのも自分。
 優越感と愛しさに突き動かされ、ジョンは慣らすのもそこそこに、熱くなった自分を突き立てた。



******


「なぁ、ジョン」

 互いに上がっていた脈も治まり、胸元に抱き込んだシャーロックが一層身体を擦り寄せる。

「どうした?キツかった?楽にしてればいい」

 優しく髪をすくと、心地よく微笑んだシャーロックがこちらを見上げた。

「お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。…でも、11時に依頼人が来るんだ」
「何だって!?」

 ガバッと頭を上げて時間を確かめる。

「どうするんだシャーロック、あと1時間もないぞ」

 探偵はニッコリと笑みを深めた。

「僕は楽にしてていいんだよな?」
「…… ;^^)」

 ジョンはシャーロックを抱き上げバスルームに放り込むと、とりあえずシャツを引っかけ部屋中の窓を全開にした。



THE END.



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