ベイカー街
□イントロダクション
1ページ/1ページ
【イントロダクション】
朝のラッシュアワーを過ぎ、深夜勤のバイトから帰って来たジョンは、PCの電源を入れ立ち上がるのを待っていた。
シャーロックは事件もないのにもう起きていて、パジャマにガウンを引っ掛けた姿で、一人掛けの椅子に膝を抱え、素知らぬ顔でバイオリンを爪弾いている。
「……シャーロック」
コーヒーカップを手に、パソコンへ屈み込んで画面を見たまま呼び掛けると、彼もこちらも向かず、ん?と声だけで応える。
「ひとりあそびをしただろう」
「!!?」
びきっと探偵が固まった。
「君が僕のPCに触るのはそういうサイトを見るときだけだ。履歴は何もないけど、僕のいない間に電源の入った記録がある−−新しくソフトを入れたんだよ、ちょっと気をつけないとと思ってね」
椅子の角度から、自室ではなくここで使ったのもわかると言って、ジョンは振り向いた。
「悪い子だな……自分だけスッキリした訳だ」
固まったままのシャーロックに圧しかかり、耳をくすぐる。
「したい時は僕に言えよ。ひとりより二人の方が気持ちイイって、わかってるくせに」
「……スッキリなんて……する訳ないだろ……!っ君いなかったじゃないか……!///」
「じゃあ今言ってよ……『したい』って」
深い口付けに促され、やっとの思いでささやく。
「ジョン……その……っ、し、たい」
「『我慢できない』」
「ジョン!」
真っ赤な顔で睨んでも、夜勤明けの彼はどこ吹く風だった。
「じゃあこのままでいいの?」
パジャマの合わせから胸元に手が這い、既に硬いソレに触れる。摘んで遊ぶと、シャーロックはビクッと身体を震わせた。
「あ……!」
「何て言うんだっけ?」
首筋を舐め上げると、赤く染まった目元と潤んだ瞳がこちらを見た。
「っ我慢……できない……!」
ぎゅっとしがみつかれ、ジョンの胸も跳ねる。
「シャーロック……好きだよ」
ありったけの優しさをこめてささやき、唇を重ねる。答えるようにシャーロックの腕が首に回り、柔らかい舌が絡まる。
感じる所を的確にくすぐるジョンの指に、耐えられず息が乱れる。
深く互いの舌を絡め、シャーロックのこぼす吐息が甘さに染まると、ジョンは唇を離して尋ねた。
「ここでいい?それともベッドまで行く?」
「……そこ」
ちょっと拗ねたように唇を尖らせ、目をそらすシャーロック。ジョンはすぐに理解した。
椅子では十分に愛し合えない、でも自室に行くまで待てないほどには熱くなっているらしい。
シャーロックを首にすがらせたまま、右腕を彼の膝裏に通して抱き上げる。
依頼人に座ってもらうソファに横たえると、白い首筋を撫でパジャマのボタンを外していく。全て取り去り、現れた肌が小さく震えるのを、なだめるように口づける。ジョンも服を脱ぎ、身体を重ねた。
ジョンの重みに、シャーロックは安心したように吐息をつき力を抜く。
「好きだよ……シャーロック」
「うん」
心地良い音楽を聞くかのように、探偵は薄く微笑み、ジョンの首筋に擦り寄る。
その素直さにジョンは含み笑った。
「誘ってるの?」
とたんにシャーロックの目元が染まり、キッと鋭くジョンを睨む。
(そんな顔したって……そそられるだけなのに)
苦笑を加え、なめらかな内腿に手を這わせる。シャーロックはびくっと震えた。
首筋にそっと跡をつけ、きめ細かい肌を味わうように鎖骨から胸元へキスを落とす。
「は……あ、ん……ジョン……っ!」
舌を彷徨わせていると、うっとりと声を上げていたシャーロックが、不意に息を詰める。
薄赤く色づくそれに唇が触れたからだ。
「感じやすいんだな。そんなにしたかった?」
舌と手で愛していると、彼自身が熱くなってきたのを重ねた身体に感じる。
「バカ……言うなっ」
「どうして?君の身体はこんなに正直なのに……。僕も君が欲しいよ」
形を成しはじめた腰を彼に押し付けると、シャーロックは一瞬震え身体を固くしたが、下腹部を吸い上げ印を散らす頃になると、何気なさを装い右足がソファの外に落ちる。
「まだ早いんじゃない?」
焦らすように内腿に痕を残していると、快楽に潤んだ瞳がジョンを睨む。
「嫌……だっ、ジョン、こっち……!」
「まだだよ」
耐え切れず中心に誘う手をかわし、熱い吐息に問いかける。
「なあシャーロック。誰を思ってひとりあそびしたんだ?」
「!」
からかう笑みを消し、胸の痛みをこらえてささやく。
「もしかして……彼女かい」
「!!」
次の瞬間、左の足裏キックを喰らい、ジョンはソファから落ちた。
「何するんだっっ!」
見上げると、シャーロックの瞳は滲んでいた。
「君は!君は僕を疑うのか!僕が必要とするのはたった1人だ。君の他には誰もいらない!たとえこの先僕がどうなっても……君は一生、僕のことだけ考えてろ!」
「……それは僕が言うことだろ。まあ……ゴメン。鎌かけて悪かったよ」
髪を撫でてキスを落とすと、抱きついたシャーロックが腰を擦り寄せる。
「ジョン、もういいから早く……っ」
密着する身体、耳にかかる押し殺した息遣い。
腰から甘い疼きが這い上がる。
こみ上げる愛しさに、ジョンは耳元へとささやいた。
「大好きだよシャーロック……愛してる」
うなずき、ぎゅっとしがみつく彼自身を擦り上げると既にそれは濡れていて、卑猥な音を立てる。
「あ……ああっジョン、ジョン、ジョン……!」
ビクン、と大きく震え達したシャーロックのそれを、掬い上げ後ろへ塗り込める。
「……力抜いて」
「や、ぁ、ん……、ジョンっ、くっ……ああ……っ!」
彼に1番近いのは自分。彼を全て知るのも自分。
優越感と愛しさに突き動かされ、ジョンは慣らすのもそこそこに、熱くなった自分を突き立てた。
******
「なぁ、ジョン」
互いに上がっていた脈も治まり、胸元に抱き込んだシャーロックが一層身体を擦り寄せる。
「どうした?キツかった?楽にしてればいい」
優しく髪をすくと、心地よく微笑んだシャーロックがこちらを見上げた。
「お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。…でも、11時に依頼人が来るんだ」
「何だって!?」
ガバッと頭を上げて時間を確かめる。
「どうするんだシャーロック、あと1時間もないぞ」
探偵はニッコリと笑みを深めた。
「僕は楽にしてていいんだよな?」
「…… ;^^)」
ジョンはシャーロックを抱き上げバスルームに放り込むと、とりあえずシャツを引っかけ部屋中の窓を全開にした。
THE END.
お気に召しましたら、ひと押し頂けると幸いです。