ベイカー街
□【happy dance】
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【happy dance】
(2)
「ホームズだって!?」
急いで一部買うと、フランス語が苦手なワトスンはルイーズに訳してもらいながら記事を読んだ。
“怪盗vs名探偵、世紀の対決!!”
本日午後、当社にルパン氏からの予告状が届いた。氏は例によって警察をコケにし、隣国イギリスより当地に来ている探偵シャーロック・ホームズ氏に挑戦した。
以下はその全文である。
『来たる革命記念日、パレードの最中に女王の手にするブレスレットを頂戴する。著名なる探偵ホームズ君および警察の諸君、阻止できるものならやってみたまえ!』
「……ずいぶんと挑発的だな」
「もしかして、お友達のあの方がホームズさんなの? もちろん、挑戦を受けられるわよね」
「さあ、それは彼に聞いてみないと」
「だったら早く帰りましょうよ!」
だが、ディナーの時間になっても彼は姿を見せないままだった。
「どうなさったのかしらホームズさん。……そうそう、ワトスンさん。残念ですけど私、演奏会に行く支度があるから明日は家に帰らなくてはなりません。街の案内はまた今度にして下さる?」
「そうなんだ」
ワトスンはがっかりしながらも、ジャンからもらった封筒を思い出して開けてみた。
「コンサートの招待状だ。3枚入ってる、数え間違えたのかな」
「ホームズさんをお誘いになったら?」
「僕がどうかしましたか」
いつの間に来たのか、ホームズが背後に立っていた。
「ホームズ! 今まで何してたんだい」
「その前に同席させてもらっていいかな? メルシィ、マドモワゼル」
すかさずグラスを運んできた若いギャルソンに料理を注文し、ワインを味わってからようやく話し出す。
「夕刊を見てすぐ警視庁に行ったよ。担当のゼニ……いや、ガニマール部長刑事は少々ゴネたが、何とか協力することになった」
「君がそんなに有名だったとは知らなかったよ」
「僕はただの学生さ。向こうが勘違いしてるんだ」
「でも、名探偵としてルパンと対決するんでしょう?ワクワクしますわ!」
「売られたケンカは残らず買う主義ですから」
さらりと言って、彼は皿の魚に取りかかった。
(3)へ続く。