鬼が来たりて
□険悪な雰囲気
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そこにいたのは漆黒の瞳と雪のような白さをたたえる肌を持つ美しい女性だった。
真砂子もかなりの美少女だがこの人には遠く及ばないような気がした。
どこか妖艶としていて、逆に恐怖を煽られるような美貌。
長く艶のある黒髪を風に弄ばせさせ、風に持っていかれないように着物を押さえる指は細く長い。
『ん?なにかな?』
高くも低くもない声は聞き心地がいい。
女性はサラシを幾重にも巻きその上に真っ黒な着流しを腹まで開くように来ている。その上から派手な模様に染められた着物を羽織っていた。
その着物がぎりぎり地面に届くか届かないかの絶妙な長さで職人の腕の良さをにおわせる。
「あ、えっと何をしてるんですか?」
『んー。村を見てる、かな?』
どこかゆったりとしたテンポの遅い喋り方で女は話した。
そのころにはナルたちが麻衣に追いつきそれぞれが女を見つめていた。
『キミらこそ、どうしたん?』
「えっと、アタシたちは…」
女のゆるい話し方に少し訛った言葉がよく合う。
『音楽関係のひとだったりするん?』
「え?」
突然の女の発想に麻衣はきょとんとした。
自分たちのどこをどう見たら音楽をしてるように見えるのだろうか?
「ん?違うのかい?」
「はい、違いますよ。えっと、どうしてそう思ったんですか?」
その奇抜な発想の理由を尋ねると、女は麻衣に合わせていた目をするっとはずし、後ろに立っていたぼーさんに合わせた。
かちりと音がしたような錯覚におそわれながらもボーさんを見ると合点が行った。
『そいつがおったから、かな』
つられるように麻衣たちがぼーさんを見ると、顔を少し青くして立っているのが目に入った。
ぼーさんと音楽がすぐに結びつかず麻衣たちは頭をひねらせる。
「もしかして…バンドとかかな?」
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