鬼が来たりて

□険悪な雰囲気
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いつも事務所であってるから忘れがちだが、ぼーさんの坊主業は副業なのだ。そして、本業はミュージシャンとかバンドのベースとか。


「あ、わかった!ぼーさんのファンなのかな?」


麻衣は一番つじつまの合う理由を思いつき大きな声を上げる。


『……坊さん?』


女は麻衣の話からその部分を何故か抜粋した。

細められた瞳に見つめられると蛇に睨まれた蛙のような気分になった。


「そ、そうだよ…えっとぼーさんは坊主で…」
「麻衣!!」


麻衣があたふたとしながらも説明をしようとすれば、先ほどよりも青い顔をしたぼーさんが大声を出して、言葉を遮った。


『フフ…自分から逃げ出したくせにのう…抜け出すことはできんかったのかい?』


見下したように笑う女にぼーさんは目を泳がしながら口を開く。


「お、お前こそ…なんでこんなとこに、いるんだよ」
『”鬼”。それで分らんほど、お前は馬鹿じゃないやろ?』


女が楽しそうに笑うと、ぼーさんの目の色が怯えから怒りへと変わった。


「てめぇ…!」
『そう……お前は私を恨み続けたらええ』
「くそっ!!」


最後に綺麗に笑うと、麻衣たちに顔を向けた。


『私はもう行くな。また縁があったら会おうな』


そう言うと女は微妙な空気のみを残して去っていった。




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