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□隠蔽女子男子3
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「ほら一年生急いでー!」
「「「はいっ」」」
返事もまとまるようになったその日はもう定演当日だ。3時から始まる本番のため会場でのリハーサルを行う。
バスもぎゅうぎゅう詰め、数少ない男子はヒゲモトさんや顧問の車に乗る。
1年生女子は補助席だ。
(先輩に囲まれて気まずい・・・)
両隣でワイワイ聞こえてくる会話が両耳に流れ込んでくるのが何とも気まずくて、かと言って携帯をいじるのもやっちゃいけないような気もするし、ぼーっとするしかなかった。
「カコ田、気まずいよね」
「うん・・・(笑)」
とりあえず前はよったなのだがカコ田が補助席ということはよったも補助席だ。よったは無理に体をひねって後ろを向いてこそっとカコ田に話しかけたがそれ以降2人とも無言だった。
会場のコンサートホール(のような所)に着き、さっそうと荷物降ろし、楽器運びに移る。
「ティンパニお願いします!」
「「「はい」」」
パーカッションが先頭となってトラックから次々に楽器が降ろされる。
一通り終わるとすぐ自分たちの楽器準備だ。
とにかく次、次、次、の日程に頭が狂いそうだ。
演奏、配置、証明、演出。確認はちゃくちゃくと進む。周りを見渡すと部員たちの真剣な表情が伺える。それはあと数時間もすると本番が始まることを物語っている。
カコ田は緊張していた。入学した時点で定演の準備は始まっていた。そんな大行事が今日まさにこの日だ。そんな経験人生で一度も無かったカコ田には未知の体験である。
(今日だ・・・!)と思うと一瞬胸がドクンと締め付けられる。胸の中に濃い霧がかかっていた。
「まぁじで!!??良かったああああああああ」
少しびっくりして振り返ると声の主は若干予想がついていたテンション先輩だった。
「分かった〜〜〜ホント良かった〜〜〜〜〜〜〜」
携帯片手に少し涙ぐんでいるようにも見える。どうしたんだろうと思ったが、カコ田には聞く権利も無いので昼食を再開させた。
*
「最終確認に入りますー」とヒゲモトさんがマイクを取った。時刻は2時。