通常(第二倉庫)

□知育菓子
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 懐かしいと思うより先に「いい大人がするかよ」と言ってしまった。「ヒロさんと一緒にしたいです」と手に持っていたのは知育菓子だから俺の返事は間違ってない、筈だ。
 予想に反して野分はあっさりと引き下がり、複数ある小袋をひとつずつ開け水を入れ粉を混ぜはじめた。ちまちまと菓子を作る大きな背中が妙にウキウキしている。
 なんだよ俺と一緒にしたかったんじゃねーのかよ。
 当てつけがましくドカッと隣に座ってやると、手を止めて、それはそれは嬉しそうに俺を見つめてきた。勝った。いや、勝った、って菓子に対抗してどうする俺。
「ふーん。今のは弁当なんか作れるのか」
 ガキの頃のは、粉を混ぜると色が変わるだけだったが、これは手順がレシピよろしく箱に書いてあるし火を使わずに料理気分が楽しめるらしい。よくできてんな。
「食べてみますか」
 小さな弁当箱からメインとも言えるパンダ形のおにぎりを器用に取り出し、俺に差し出す野分の、柔らかな笑顔に釣られて口を開けた。
「甘ッ」
 見かけは弁当だが、間違いなく菓子だ。駄菓子の甘さだ。
「お前も食べてみろよ、マジで甘いから」
 タコ形ウインナーのミニチュア菓子を摘んで、野分の口に放り込んでやる。
「そうですね、甘いです。とても」


 蕩けそうな顔で微笑むお前ほどじゃないけど。




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