ハコニワ

□たまごから生まれるもの
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往診を済ませて、ヒロさんはお昼ご飯に何が食べたいのかなと考えながらヒロさんの図書館へ向かう。
「あ、草間先生だ!」
図書館から出てきた子供達が、駆け寄ってきた。
「あのね、草間先生。弘樹先生にこれもらったの」
そうっと広げられた小さな手のひらに、ピンク色の花弁が貼り付いたまご型のものがあった。
「可愛いね」
「みんなでお花摘んでペタペタしたの」
「栞ちゃんが教えてくれたの」
「弘樹先生も一緒にやったんだよ!」
ヒロさんも。
いいでしょ〜。と、自慢して、子供達は帰っていった。
小さな子供達と一緒に花を詰むヒロさん…見たかったな。

「お、野分。おかえり」
「草間先生こんにちは。弘樹先生からクッキーいただきました。いつもありがとうございます」
「こちらこそ。いつもヒロさんのお手伝いありがとう」
図書館の片付けを済ませて、栞ちゃんは帰っていった。
「ヒロさん、お昼は何食べたいですか」
「何、って言うか…。あのさ、その…ウチにあるタマゴ全部使っちまったんだけど…」
「全部ですか」
「う、……スマン」
食材とは言え、許可なく夫婦の共通財産を使い切ったと申し訳なさそうにしているヒロさんが可愛い。
まだ1パックはあったはずのタマゴを何に使ったのか。そんなことはどうでも良くて、ヒロさんを抱きしめたいけれども、一応、何に使ったのか聞いてみる。
そっと目の前に出されたのは、ピンク色の花弁が可愛らしく貼り付けられた、たまご型。
「ああ。これ、さっき子供達が見せてくれました。タマゴの殻だったんですね。中身はどうしたんですか?」
「ウチの冷蔵庫。黄身が潰れたのもあるからまとめてボウルに入れたけど。昼飯、オムライスにするにしても量がな…」
「オムライスいいですね、俺作ります。大丈夫ですよ、残った分は炒り卵や錦糸卵にして冷凍しておけますし」
「俺も作る」
「共同作業ですね」
手をとってキスすると、「ヘンな言い方するな」だとか「今までだって一緒に飯作ってきてんのに何を今更」だとか、照れ隠しするヒロさんが可愛くて可愛くて、抱きしめた。




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