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□燃える瞳に魅せられて
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 ベランダに出て空を見上げると今夜
 は満月だということに気が付いた。
 そのせいかあたりはいつもより明る
 く満月を映している海はキラキラと
 輝いていてとても綺麗だった。

 真夜中であるこの時間帯には何故か
 いつも外の空気が吸いたくなる。
 1階へ降りて庭に出てみるのもいい
 が、それでは執事であるテレンスに
 心配をかけてしまうかもしれない。
 人に心配されることなく邪魔される
 ことなく外に出るには名前にはベラ
 ンダで十分だった。

 いつものように外の空気を吸ってベ
 ランダからの綺麗な風景を眺めてい
 ると隣の部屋から女の悲鳴というべ
 きか喘ぎ声というべきか…。うっす
 らとだが声が聞こえてくることに気
 がついた。


 「はぁ……」


 一気に気分が悪くなった私は部屋の
 中へと入りテレンスがおいしい朝食
 を作っているキッチンへと足をはこ
 ぼうと廊下に通じる扉のドアノブへ
 と手をかけると力を入れる前にその
 扉は音をたてて開く。目の前にはさ
 っきまで隣の部屋にいたDIOがいた。


 「名前……」


 私を目にすると愛おしそうな顔で抱
 きしめてくるDIOはとてもさっきまで
 違う女を抱いて血を吸っていたなん
 て思えない。だけど、服についた女
 の香水の匂いとか血の生臭さが今起
 こっていたことを物語っていて吐き
 気さえしてくる。


 「DIO、離れて」


 我慢できなくなり突き放すようにDI
 Oから無理矢理離れる。DIOはこの一
 言に素直に従うと私の機嫌をうかが
 うように、ふわりと頬を撫でた。


 「どうした?」

 「なんでもない」

 「このDIOにも言えないことか?」


 心配そうに私を見つめてくるDIOに思
 わずため息がでる。
 もし私がその燃えるように紅い瞳を
 くりぬいて、その鋭くとがった美し
 い犬歯を引き抜いたとすれば、
 あなたはもう女の血を飲むことはな
 く他の女を抱いたりしないだろうか?
 そんな答えなんてわかりきっている
 のに考えてしまう自分が嫌になる。


 「…少し気分がすぐれないだけよ」

 「では、テレンスを呼んでこよう」

 「まって、DIO」


 私の頭にポンと手をおくとドアノブ
 へと手をかけて出ていこうとするDIO
 を呼び止める。


 「なんだ?」


 半分開いた扉から見える廊下にはさ
 っきまで抱かれ血を吸われたのであ
 ろう女が死体となって転がっていた。


 「その香水、あなたには似合わない
 から早くおとしてきて」

 「わかった」

 ようやく理解したのか私のおでこに
 キスをする。すまなかった、と耳元
 で呟かれれば背中がゾクリとふるえ
 て身体が熱くなるのがわかった。




 燃える瞳に魅せられて
 (いつものように堕ちていく)


 2013/03/18

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