チョコレートな君

□襲い掛かってくる恐怖と睡魔
1ページ/1ページ












あんなに気を付けていたのに…


「遅くなっちゃった…」


私のアメリカ留学お祝いということで友達のウェンディーが開いてくれたパーティー。
主役の私が早めに帰るわけにはいかず、こんな時間になってしまった。
アメリカの夜の街は危険だと言われていたというのに。
時計を見ると8時を指している。
幸い街灯がついているため少し前くらいは見える。


しかし、これ以上は…


私は早くアパートへ帰るのを優先し暗い路地へと入った。
早足で歩く私のハイヒールのコツコツという音だけが響く。
視界がだんだんと暗くなっていき完全に前が見えなくなった時。



「これでどうだ?」

「あぁ、十分だ」



2人の男の声が耳に入った途端足を止める。
―――麻薬の取引か。
治安の悪いこの街ではよくある話。
実際にこの場面にあったのは今日が初めてだけど。
私はクルっと回れ右をしてきた道を歩き出した。
真っ暗でぼやける目をこすった、その時。




ガンッ




何てことだ…
やってしまった…
何も見えないけど、足に痛みが走った。
何かを思いっきり蹴ってしまったらしい。
痛みで思わずしゃがんだ。


「誰だ」


すると、すぐに背後から聞こえる声。
それはさっきと同じ男の声だということはすぐにわかった。



――――逃げなきゃ。



そう思うのに痛みで足がうまくたたない。
恐怖で声もうまく出せない。
真っ暗で何も見えない視界から見えない誰かへ助けてと必死に手を伸ばした。

しかし、手を伸ばしても誰も握り返してはくれず
背後からハンカチのような布で口元を押さえつけられた。

急に襲い掛かってくる睡魔。
それに私は意識を手放した。






襲い掛かってくる恐怖睡魔




●●

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ