チョコレートな君

□わかりにくい優しさに気づいてやれ
1ページ/1ページ







「メロがお前のこと嫌いだと?」

「……うん」

「メロがそう言ったのか?」

「…そうじゃないけど」


もやもやが消えてくれない。
グラスに大きい氷を1つ入れて1番高そうなお酒を注ぐとロッドにグラスごと奪われた。


「なによ」

「お前は飲むな」

「マフィアのくせにこういうのはきちんとしてるのね」


嫌味ったらしく言ったつもりだったがロッドはヒヒッと笑う。


「まったく、お前らは見ててあきねぇーな」

「どういう意味よ」

「お前、メロが何で今ここにお前をこさせたんだと思う?」

「私が邪魔だったからでしょ」

「それは2割くらいだな」


2割?
2割ってどういうことよ、そう言おうとするとロッドが先に口を開く。


「お前、今までは1人で中をウロウロするのは禁止されてたんじゃないか?」

「……されてた」

「1人で俺に会いにくることも」

「………」

「今日はいつも俺の周りにいる女どもがいないだろ?」


そうだ……。
なにか足りないものがあると思ったら私をイジメたお姉さんたちがいない。


「メロはな、女どもがいないことを知ってお前をこさせたんだよ」

「……何のために?」

「俺と話をさせるためだろ」


話をさせる、ため?


「お前、最初俺のこと怖がってロクに話しかけることすらできなかったろ」


あぁ……。
そういえば、そうだったな。
つい最近の話なのになぜか懐かしく思う。


「マフィアにいる限り、ボスの俺と仲良くできなきゃ生きていけねぇーからな」

「じゃあ何?ここに私がいるのはメロの優しさだっていうの?」

「半分は俺の予想だけどな」

「なんだ、じゃああてにならないじゃない」

「どうだかな」


ロッドはそういうとグラスの中のお酒を一気に飲み干した。
そして出入り口へ指をさしたかと思うとそこにはメロがいた。


「名前、遅い」

「メロがロッドのところに行ってろって言ったんじゃん」

「ロッド、snakeは完全に潰しといたぞ」


私のことは無視ですか。
ロッドを見るとメロに「あぁ」と低い声で呟いて私にニヤリと笑う。

その瞬間メロに腕を引っ張られた。
多分、そのまま部屋に帰るのだろう。
最後にロッドを睨んでやろうと思って振り返るとまたニヤリと笑って


名前、
わかりにくい優しさに気づいてやれ


と小さい声で言った。


なによ、マフィアのくせに。
……睨んでやろうと思ってたのに。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ