チョコレートな君

□まったく、予想外の一言
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"わかりにくい優しさに気づいてやれ"


あの日、ロッドが言った言葉が耳から離れてくれない。

メロの優しさ、ってなに?
私の目のことを隠してくれてること?
私の世話係をしてくれてること?
私と友達でいてくれてること?

だけど、それは私の世話係だったから。
…メロの優しさって何?


ゆっくりと目を閉じて考える。


「……ヤバい、何もわかんなくなってきた」


ベットに寝転がりながらそう唸る私。
すると、さっきまで隣にあったチョコレートの甘い匂いが遠ざかっていく。


ロッドのところへ行くのかな…?


顔を上げようとした時、頭に軽い痛みが走った。


「いたっ、なにすんのよっ」

「………」


無言でメロが私に差し出してきたのは…国語辞典。
どうやら、私はこれで頭を叩かれたらしい。


「……なんで、国語辞典?」

「何もわからなくなってきたんだろ?」

「ん?……あぁ…」


だから、国語辞典持ってきてくれたのか。
といっても、メロの優しさについて書いてある辞書なんてないだろう。


「これだとわかんない」

「じゃあ何だったらわかるんだよ」

「……何だったらわかるのかな?」

「重症だな」


重症……確かに重症なのかもしれない。


「メロ、私にも優しくしてね」

「は?」

「メロはね、本当は優しい子なんだってさ」

「……ロッドか」

「世話係、嫌だったらやめてもいいんだよ?」

「…お前、さっきから何が言いたいんだよ」


自分でも何が言いたいのかわからない。
でも、メロに伝えたいことはちゃんと言った。

黙ったままの私にメロはため息をつく。


「世話係はやめない」

「…なんで?」

「やめてほしいのかよ」

「そういうわけじゃ……」

「あと、俺が優しくしてるの名前だけだ」



それは、
まったく予想外の一言



「俺がロッドに優しいと思うか?」

「……思わない」

「他の奴らにも優しくしてるか?」

「ううん」

「少しは考えろ」

「(優しくされてるっていう自覚がないだけなのかな、私……)」




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