チョコレートな君
□そんな顔が見たかったんじゃない
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ロッドと話をつけて部屋に帰ると名前は月明かりに照らされていつも通りぐっすりと眠っていた。
一瞬起こすことをためらったが、気持ちの整理がついた今言わなければもう俺の口から言うことは無理だと思った。
「名前、起きてるか?」
「ん、……?」
眠たいのか、目をこすりながら起きる名前。
きょろきょろしているところを見ると、暗くて俺が見えていないのだろう。
それでいい。
名前に俺の顔を見られたくなかった。
俺は今、どんな顔をしている?
きっと、笑っている。
この気持ちを隠すように、俺自身をあざ笑うように。
「メロ……どうしたの?」
「3日後」
「……え、」
「日本へ帰ろ」
俺は、ちゃんと言えていたか?
いつも通り言えていたはずだ。
名前は、今どんな顔をしている?
笑っているのか、と考えただけで名前の顔が見れなかった。
「メロは行かないの?」
「あぁ」
名前は、
「私はもう自由ってこと?」
どんな顔をしている……?
「そうだな」
「……」
黙るってしばらくたつと名前が小さく泣いている声が聞こえた。
「……なに泣いてんだよ」
「…泣いてないしっ」
「……」
いまだに名前を見ることができない俺は本当に名前が泣いていないのか確かめることすらできなかった。
そもそも、なんで泣いてると思ったのかすらわからなくなってきた。
本来なら、名前は笑っているはずなのだから。
もし、俺が名前を日本に帰したくないって言ったらどんな顔をする?
なんで……
そんな顔してんだよ
俺は……
そんな顔が見たかったんじゃない