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□桜サク
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俺は、夢を見ていた。
何年後かの未来の夢だった。

きっと20代だろう俺は、一人部屋の中でパソコンをずっといじっていた。
その部屋はひどく荒れていて、まるで泥棒にでも入られたかのような惨状。
そうきっと、多分俺は・・・ひきこもりと化していたんだ。



「タキ、お前マジで起きないと遅刻するぞ」

ゆさゆさと肩を揺さぶられる。
長い長い、俺の夢はそこで終止符を告げ・・・目を開けたその瞬間から俺の記憶にその夢は既に残ってはいなかった。

「ぅ・・・ん。も、ちっと・・・」

瞼はまだ重たく、俺を眠りへと導く。
聞きなれた幼馴染の声は既に遠く、俺の中から排除されようとしていた。

「おい、タキ。こんなところにエロ本隠してたのか」

「っ、え!?ちょ、オカン・・・!」

それはよろしくねえ!!
そう叫びながら身体を勢いよく起こす。
目を開けたそこには引きつる笑みを浮かべる幼馴染でありご近所さんのグリーンがいた。

「誰がオカンだ誰が」

「え、グリーンって明らかオカン」

まさか今の今まで気がついてなかったのか?
それは残念な頭だな。
哀れみをこめて今日も元気いっぱいツンツンしているグリーンの頭を撫でてやった。
瞬間カ、っと目を見開き立ち上がってしまったグリーンにあれれ、と声を漏らす。
え、まさか反抗期?

「セットが崩れる。ほら、早く用意しろよ」

「って、あれ。エロ本は?」

「んなもん自分からなんて絶対探さねえよ」

そのセリフにホっと息を吐く。
何だかんだいって自分の趣味はあんまり人にさらけ出したくないもんだ。
大体、以前友人に打ち明けたらすっげえ嫌な顔されたし。
なんかもうあれは俺の趣味がイヤとかじゃなくて、俺の友人であることがイヤって顔だったな。
あ、なんか視界がゆがんできたなんでだろ。

「グリーン、今日の朝飯は」

「タマゴかけご飯」

なんて王道・・・!
ヨロリと身体を揺らしなんてこと・・・、と声を漏らした。
あ、めちゃくちゃ面倒そうな顔された。

「朝からそのテンションうぜ」

「悪かったなテンション高くて」

ったく、言ってやがれ。
そのうちこの俺のテンションに感謝するときが・・・来るんだよきっと。

「・・・あれ、なんか今日あったっけ?」

「入学式の進級式」

なんてこったー!
まるでこだまのように、俺のそれは家中に響いた。


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