捧 / 貰

□そうじゃなくて、おかえり
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ジュウと水の蒸発する音がフライパン上で鳴り、水が走る走る。
やがて熱されて空気上に散り散りになっていく水はそこから姿を消してしまうのを見届け、油を敷いて行った。


「あ、やば」

通常よりも多く流してしまった油に小さく声を漏らす。
もったいない。こんなに油、必要じゃないのに。
口の中で吐く息を、寸前で飲み込んで少しだけ顔を上げる。
何でもかんでもため息を吐く。俺の悪い癖だ。
既に溶き終え、鮮やかな卵色をする液体の入ったボールを掴み取って、少しだけ流しいれた。


「・・・退屈な休日だ」

孤独は、久しぶりだった。


◆◇◆


「68・・・ん、っ・・・6,9、・・・は、は・・・ぁ、7・・・0」

頭に添えた両手がプルプルと震えて、いやむしろ俺の腹筋が崩壊する。
ダラダラと額に浮かび上がる数多の汗の玉が次第に伝い落ち、ラフに、とわざわざ着替えた一枚の半そでの首元をぬらしていた。
漸く迎えた70回目だったがまだこれではダメなことくらいわかっている。
せめて100。そろそろいい年も近い。腹筋くらいつけておきたい、と思うこの頃なんだ。

「ふ、は・・・はぁ、はぁ」

気持ちはそうは思うものの、運動不足だった体は70で限界を迎えているらしい。
激しい動悸と息切れに、苦しげに顔を顰めて体中から力を抜いて床に横たわる。
冷たいフローリングが心地よい。
ああ、今にも眠れそうだ。身体が熱いのに眠いなんて、おかしいな。

「・・・」

薄ボンヤリとあけた瞳。
映る真っ白な天井を見つめながら胸にポッカリ開いてしまった穴をじいっとなぞる。
広がる、穴。
何をこんなに必死になって埋めようとしているんだか。もう、慣れっこだったはずなのに。
十分に俺は独りに慣れ、だけど一人にはなれなかった。

「・・・レ、」

結局どこかで、誰かを求めていたんだ。


「何で泣いてるの」

ふわりと頬に冷たい指が触れて、撫でた。
疑問詞さえつかないほどの抑揚のない声がずうっと独りきりだった部屋に響きわたる。
冷たい手だけど、確かにそれは人の体温だった。

「帰ってきたのか」

「・・・なんで泣いてるの」

「汗だよ」

「僕のせい?」

「さあ・・・どうだか」

真っ赤な瞳が上から射殺さんとばかりに俺を目を捉える。
なぞる目元が濡れているのは汗のせいか。それとも、また別の物質か。
自分でも、わからない。だけど。


「・・・ごめんなさい」

勝手に出て行って。
そう口の中で言う少年の手を両手で包んでけして上手ではない微笑を、顔の上に乗せた。

「そうじゃなくて、ただいま・・・だろ」

熱く火照った身体を冷ますフローリングと少年の指先に目を細める。
少年は驚いたように少しばかり目を開き、口を結ぶと握られている手に力を少しだけ入れた。

「・・・ただいま」

「ああ、おかえり。・・・レッド」

すっかり冷めたオムライスをさあ、暖めようか。


END



ヲ様、大変おそくなり申し訳ございませんでした!
コ、コメディ・・・!す、すいませんっコメディじゃないですねこれっ!!
ていうかむしろ最終回の勢いってどうゆうことなんでしょうか。笑
たくさんの素敵な絵を貰ってばかりで捧げるものがこのクオリティとか申し訳なさすぎます・・・><
自分的には書いててとても楽しかったです><*
・・・完全に私だけがいい思いしてますね・・・!大変。
苦情や書き直しなどありましたらなんなりとお申し付けください!
いくらでも書き直します!!


この作品はヲ様のみ苦情・お持ち帰り可能です!
ヲ様、相互ありがとうございました!
これからもよろしくおねがいします・・・!



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