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□、と囁くキミ
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※近親相姦/「好きだよ」続き



「好きだよ」

ゾワリと背筋が凍った。
こんなこと、絶対におかしい。

つい先刻、玄関が開く音に身を固め咄嗟にとった行動。それは狸寝入りであった。
空き巣か、はたまたそのほかか。とにかくこの咄嗟の行動に後悔したのはそう遠くない未来で。


「・・・」


5つ離れた兄であるダイゴはホウエンのチャンピオンであった。
そして彼はその若い情熱を異常なほどまでに"石"というものに注いだ。
そんな少し変わった兄が幼い頃俺は好きだった。勿論家族愛。しかし、兄は違った。
いつの頃からか感じる視線はどこか熱い、熱を孕んだ視線で。幼い頃はそれがナンなのかもわからずにただ悪寒がしただけだったが、俺も思春期を向かえ恋を経験すれば必然的にその視線が何を含ませているのか気がつくわけで。
同じ男同士、何を考えているかなんて安易に想像がつく。
俺が寝ていると思い込んで聞きたくもないような言葉を吐き何を考えているのか。毎晩一つ壁をはさんだ隣の部屋で何を想い何をしているのかだって。

すぐ近くにある気配に、狸寝入りがバレないよう息を殺す。
なんのためにこっちで一人暮らし始めたと思っているのか。
(一生アンタには伝わんないだろうけどな)
心中苦虫を噛み潰したように顔を顰め気持ち悪い愛情から逃げるよう、身をよじった。


「本当、やばい」

髪の毛に指を絡ませ撫でながら呟かれたセリフに耐え切れなくて、薄く目を開く。
さも、今目を覚ましたように。故意を偶然に。

「ん・・・、あに、き・・・?」

思っていたよりもカスカスの声が出たことに顔を顰め兄を見上げる。俺の額に掛かった髪を優しく恋人にするかのような手つきで退ける兄はこれまた恋人に向けるような甘い笑みを乗せておはようと優しく言った。

「・・・おはよ、」

俺の頭を撫でる手がほんの一瞬だけ止まり、そしてすぐにまたいつもどおり。
一体今の間はなんだったのか、なんて。ずっと兄の顔を見ていたせいでそんなことわかっているのに。

「久しぶりだね、ソウ」

誤魔化すように逃げるように手を退ける兄。
兄貴が逃げるなら、俺は何もしないよ。久しぶり、と兄貴に笑いかけた。



好きだよ、と囁くキミ
(兄の仮面を被るキミ)
(被りきれていないことにさえ気がつかない、愚かな兄)

「なんで、今にも泣きそうな顔したの」


((お兄ちゃんを壊したのは、弟の俺だってこと))



END



なんだかよくわからない作品になっちまったぜ。
ダイゴさんは兄の仮面は完璧だと思っておりましたが大誤算だったってことですどうゆうことだ


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