喰
□たまには嘘も甘いものになる
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『……で?』
『えぇ、と』
『本当のこと教えて?』
にっこりと笑う喰君。
だけど
笑顔がとても黒いのです!
事の始まりは、約30分前のこと。
『はぁ…やっと片付けが終わったよ〜』
身も体も疲れていた頃…
『あ、朔さん!』
『おっ璃瑚じゃねーか。…随分とヨレヨレだなぁ、おい。』
『あ、分かります?見ての通り片付けをしてたんですが…』
『そんなの羊達がやるだろ?』
『でも、1人で全て片付けないとキイッちゃんが帰らせてくれないんですもん。だからさっきやっとの思いで終わらすことが出来たんですけど…』
『大変だったな璃瑚。まぁ、息抜きにティータイムにでもするか!』
『えっちょ!朔さん!?』
いいからいいから、と朔さんは私の肩に手を置いて部屋に入る。
『あれ…此処って』
『ああ、喰の部屋だ。』
『へぇ〜通りで。』
なんとなく、喰君の部屋だと感づく事が出来た。
だって、植物があちらこちらにあるんだもん。
相変わらず凄い趣味だよね…喰君って。
『というか朔さん。勝手に使っていいんですか?』
多分成り行きで入ったから喰君の許可なんてとってないと思う。
もし、喰君の部屋を汚したりしたら…
考えるだけでおぞましい。
『あの…朔さん?私飲みませんッ』
考え事をしている間に、朔さんはティー(酒)を注いでいる。
『なんだぁ璃瑚〜。上司に楯突いて良いのか?』
私と朔さんの関係は上司と部下。
上司の命令は聞かなくては後々大変な事になりかねないのでここは素直に聞く事にした。
『じゃあ、一杯だけ…』
『おう、じゃんじゃん飲め!』
いや、一杯だけって言ったんだけど。
と決して口には出さず、心の中で思いながらグビッと一気飲みした。
『良い飲みっぷりじゃねーか!ほら、もっと飲みたいだろ?』
と朔さんは私の手元にあるグラスを奪い、酒を注ぐ。
暫くして、朔さんは酔っぱらったのかふらつきながら立ち上がろうとする。
…あれ。この人こんなにお酒弱かったっけ?
と思いつつ、倒れそうな朔さんを支える。
『よしッもういっ…ぱいいくか』
『いやいや、朔さんこんなに酔っているんですから、止めた方が…』
『俺はまだまだいける!』
と酒を持ったまま腕を勢いよく振り上げた。
ガン ド パリーン
『…』
沈黙。
『まぁ、これは璃瑚に任せたぜ!』
『ぇえ!?そんなッ朔さん!!ふざけないでください!私を殺す気ですか!?』
私の言葉なんて一切聞かず朔さんは扉を閉めた。
こんのォ裏切り者!!
と叫んだ後私は(叫んでしまった以上気にしないどうせ酔っていて覚えていないだろう…そう思いたい)急いで片付けに入ろうとした。
こんなの喰君にバレたら死刑と同じだよ。
そう思いながら、散らばった破片(プランター系)を拾い集めていた。
最初は優しい人だな〜と思っていた。
…けど、あの時以来私の中の喰君のイメージがガラリと変わってしまった。
それはあえて伏せておこう。
『はぁ…なんでこうなっちゃったんだろ。』
『それは僕の台詞でしょ?』
『うん、確かに。喰君が怒るのも無理は……』
ズザザザッ
『じ、喰君!?』
『どうしたの?後ずさりなんかして。』
『えぇと、あの』
『璃瑚が割ったんだ?』
ひぃッ!?
何この物凄い威圧感!
『いや、その……ウサ達が遊んで、割れちゃいました。』
うわぁ…とっさに嘘ついちゃったよ。
ウサ達、ごめんなさい!!
『ふーん?…本当に?』
うわぁ…なにこの目!
絶対ウサ達じゃないってバレてるよッ
つ、朔さんの馬鹿ぁああ!!
怖いじゃないかぁあ(泣)
怖いじゃないかぁあ
心の叫びがこだました。
そして最初に戻る。
『あ、うぅ。言えません。』
『素直に自分が割りましたって言えば済む話じゃない。』
(だって私が割ったんじゃないもん!)
『じゃ、じゃあ仮に私が割ったとして…喰君は許してくれる?』
(許してくれるなら私が割ったと言えばいい。許してくれないなら朔さんが割ったと言う。)
(朔さんなら許すでしょ…だって上司だもん)
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