とある隠れ変態の物語

□びっくり、現場発見!
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「これは、一体……」
「うふ、ちょっとした小遣い稼ぎと栄養補給よ」


綺麗な顔をにぃっと歪めてそう言う柚子には、普段のお嬢様オーラは見当たらない。


「でも柚子さんは美人なんだから、自分でも稼げたんじゃ無いの?」
「いやーね、私が美人なのはとっくに知ってるわよー。でも私が体張るよりもあなた達がいちゃこらしてる写真の方が売れるのよねー」
「……お金に困ることって無いんじゃない?」
「親のスネかじるなんてイヤよ」


何て事だ。
美人でおしとやかな筈の柚子さんは、裏では勇ましい売人だったなんて。
「さってとぉ、残りは後八枚よ。買った買った」


柚子の一言でどんどん無くなる写真達と、どんどん増えるお金達。八枚の写真は一瞬にして完売し、お開きになった。












それにしても、何でこんな商売始めたの?
その問いの答えは、たまたま行事の時に撮った写真に薫さんと瑞穂さんが写っていて、それを欲しいと言われたのがきっかけらしい。

「いい商売よ。ばんばん売れてくもの。前までは薫さんと瑞穂さんが一番売れてたけど、最近はあなたと羽恋ちゃんのセットが人気ね。
ベタベタしてくれるんだもの、いくらでも素敵な写真が撮れるわ」


伸びをしてブレザーの内ポケットに手を突っ込む。
何をしているのかと思ったら、そこから出てきたのは一枚の写真だった。

そしてそれは――。


「…………あれー?」


羽恋にイチゴジャムパンをあーんしてもらっているもの。


「五百円が68枚。はい、計算」
「三万四千」
「大正解。一昨日ね、この写真を8枚現像して持って行ったのよ」
「……うん」
「そしたら三十秒も経たないうちに売れて。昨日は20枚。それも二、三分で完売。
今日は二倍の40枚持って行って、それも五分で完売。これだけで三万四千円の売上よ。供給が需要に追い付かないのはいつもの事だけど、これはかなりね。びびったわ」


この荒稼ぎ方法を思いついたあなたにびびるんだけど?

柚子の横顔は夕陽に照らされて赤く染まっている。
微笑む姿はどう見てもただのお嬢様にしか見えず、実際はそうでは無いのだという実感が全くわかない。


「あなた達のおかげでかなり稼げたわ、ありがとう。……という事で、紅茶でもご馳走しようかと思うんだけど、この後どうかしら」
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