とある隠れ変態の物語
□羽恋とデート、正午の部
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「あははっ、そうかもね。でも関係ない。羽恋がそう言ってくれたら、どうでもいいよ。だからほら、泣かないで……あんまり泣くと襲うから」
「ふえっ?!」
もちろん後半は本音である。けれど羽恋は泣いている自分をなぐさめてくれたと解釈したらしく、ありがとなと笑顔で言った。
「まぁ……尚輝に襲われるなら本望だけどなー」
「そんな事言ったら本当に襲っちゃうよ?」
冗談じゃないから、本当に襲うから。
今日は我慢しないって決めたから。いや、多少我慢するよ、多少は。
「うむむ、そんな事言ったら彼女が悲しむ……あれ?尚輝って彼女居るのか?!」
「いないよそんな子」
変態ですから。いや、ホモですから。
「えー、尚輝ならすぐ出来ると思うんだけどな」
「いらないよ〜、オレは自由が良いし。好みの女の子いないし」
女の子はね。
それより羽恋が欲しいよ。なんて、言えないけどさ。
それから数分後、レジにて。
「えっ、良いって。代金自分の分位払うって」
「いいの。オレが払いたいから。ね?バイトしてるから大丈夫」
「うー、ありあと……」
「どういたしまして」
払うから払うからと言う羽恋を無理矢理ねじ伏せて、代金を払う。やましい妄想をさせてくれたし、可愛い事言ってくれたからさ。
ほんのお礼。
とは言えない。
マックのお姉さんの、元気なありがとうございましたに背を向けて店を出る。
さて、次は何するかね。
「ありがと……あ、っと、何か命令して。叶えられたら……頑張るから」
命令?!
なんて良い響き。
羽恋、君人を喜ばせるの上手だね!!!!
でもね?
それは駄目だよ女装してとか言っちゃうから。
「羽恋、それは駄目。オレが勝手に払っただけだから」
「尚輝、それは駄目だ。オレが勝手にしたいだけだから」
うわっ、ひっくり返された!
「……なら、そうだね。オレの彼女役、やってくれる?」
ならここは、当たり障りなく。
「彼女役?オレで良いのか?」
「だって叶えてくれるんでしょ?羽恋」
「むむっ、分かった。じょ、じょ、女装もだったりするのか?」
「その辺の判断は羽恋に任せるよ。叶えてくれるんでしょ?」
よし、地味に重圧かけとこっと。
分かった……とまた赤くなって言う羽恋は、きっと女装もご丁寧にしてくれるんだろうと思った。