とある隠れ変態の物語
□ドSとドMの夜
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オレの気持ちを受け止めてしまったら、何時でも何処でも傷付く事になってしまうから……わざと、受け止めないんですよね。
『瑞穂が大好きだから、オレはあえて受け止めない』
柚子さんにそう言っているあなたは苦しげで、つらそうだった。
同性同士であんな事やこんな事……位なら、セフレだって割り切る事が出来なくもない。
…………かなり無理があるけれど。
でも、オレの恋愛感情を受け止めてしまったら……
同性での恋愛を認めた事になる。
隠し通すにしても、さらけ出すにしても瑞穂がつらくなるからと……そう言ったあなたを見てしまった時。
悲しくてつらくておかしくなったと同時に、あなたの真の優しさに気付いた。
あなたがわざと意地悪をする事にも気付いた。
そんなあなたは、たまに優しくなりますよね?想いを受け止めない、罪滅ぼしのように。
だから嬉しいけれど、悲しくもあるんです。
「………って、……だ……」
「……何だ?」
「好きって、言って下さいっ」
口先だけでも良いから。
そしたら……悲しい気持ちは忘れるから。
せめて、欲しい言葉を下さい。
「……そしたら、我が儘はもう言いません」
「嫌だ」
「っ、どうして」
「我が儘言わない?ふざけるな。そんな事になったらお前を抱けないだろが」
おっかなすぎる瞳で睨まれる。
「……やっぱりつらいよな」
かと思いきや、しゅんと沈んでしまう。
「――分かった。オレの気持ちに折り合いを付ける。オレもお前を傷つけるのは不本意だ」
ごめんな。
そして急な謝罪。
余計悲しくなって、自然と視線が下がる。
唇をぎゅっと噛んで気持ちを紛らわせて――。
「っえ?」
何故か体が傾いて、そして視界いっぱいに広がる薫さん。
鼻先をくすぐる控えめな薔薇の香り。
「身勝手って事は分かってる。早めに折り合い付けるから」
オレは、
薫さんに膝枕をされていた。
薫side
本当に身勝手だ。
瑞穂がオレを好きなのは良く知ってる。
……オレも瑞穂が好きだし。
でも。
オレ達には世間体と常識って壁がどーんと立ちはだかってるんだ。
そんな事気にするなんて馬鹿ねぇと柚子に笑われたが、こればっかりはどうにもなんねぇ。