混合-夢&CP-

□腐れ縁
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「そういやよ」
「あ?」
「俺の従兄弟のりんごちゃん知ってんだろ?」

クリスマスの特番をつまらなそうに見ていたカルディアが脈絡のない話題を振ってきた。

アップルパイを食う手を止め、過去の記憶を辿る。

こいつがりんごちゃんと呼ぶ俺の知っている人物……。

そして、一人の人間を思いだした。

「……あの金髪のもふ毛のガキか?」
「そうそう!それそれ」

合ってたか。まぁ、思い出したのは髪型だけだが。
なんせそいつと会ったのは高校時代の時だったからな。
あと覚えてんのは生意気なガキだったってことぐらいだ。

「それがどうした?」

またアップルパイを食い始めながら聞いた。

「いや、先週に俺んとこにカミュと一緒に遊びに来てよ」

カミュ…あぁ。それは覚えてる。赤髪で無表情なデジェルの従兄弟だったな。

「そんで先週雪積もってたから近くの空き地で遊んでやってたんだわ」
「そうか」
「そしたらミロがかまくら作りたいって言い出したから仕方なく4人で作り出したんだわ」

あぁ、そういやミロって名前だったな。

「で、2時間ぐらいかけてようやく出来たんだよ。そしたらミロが俺を差し置いて一番に入りやがったんだ!腹立つだろォ!?」
「お前はいくつだ」
「でもその入った直後にいきなりかまくらが崩れてよ!ミロの奴生き埋めになりやがって!もう、あん時はもう笑った笑った!!」
「お前が生き埋めになればよかったのにな」
「ま、そのあとデジェルに正座させられたけどな」
「つかよ、結局何が言いてぇんだよ」
「ま、つまりだ…この最後の一切れは誰が食うかって話しだ!」
「食いたいんだろ」
「おっ!いいのか!?」
「勝手にしろ」
「サンキュー」

回りくどい真似しなくてもやるっつうの。てか結局半分近く食ってやがるし。

「てかさっきまでの話関係ねぇだろ」
「いやいや関係あるぜ?俺が言いたかったのは…あれだ、残り物には福がある」
「何か違うだろ」

そう言っている間にカルディアはペロリと最後のアップルパイを食ってしまった。


「つーかあれだな」

背伸びをして、腹をさすりながら切り出してきた。
世話しない奴だ。

「お前もクリスマスに一人とは寂しい奴だなァ!」
「お前もだろ!」
「いてっ!別に殴る必要なかったろ!図星だからって…」
「もう一発食らうか?」
「いや、遠慮しとくわ。だってお前もそれなりにモテんだろ?高校ん時とか、彼女何人振ったんだっけ?」
「ほっとけ」

使った皿やらを片付けながら返事をしていると、カルディアに右目の傷に触れられた。

「ウソ。この悪ガキが」
「…テメーも似たようなもんだろ」

手を払いのけ、皿を重ねてキッチンへと運ぶ。

後ろからカルディアの舌打ちが聞こえ、チャンネルをいじる音がした。


――たしかに、お前より女は寄ってきたし、お前より若干荒れてた。



高校の時が一番荒れてたと自覚はしている。

家庭の事情やら、周りの環境やらについて行けなくて、いや、ついて行きたくなくて。

人にも、物にも当たりまくって、壊して。

なのに無駄に女は寄り付いて来て。
カルディア曰わく「悪い男に最近の女はころっといっちまうんだよ」とその当時言っていた。

あと「なのに何で俺はモテねぇんだよ」とも漏らしていた。

その理由は当時の俺にでもわかる。
お前の性格がガキの頃から変わってねぇからだ。

男女の差別はしない。
わがままで無鉄砲。
事を大きくして悪化させる。
やられたら3倍で返す。

そんな調子で所かまわずやっていれば寄る人間は減るだろ。

いや、その素直さには呆れを通り越して憧れを感じたりする。


「…ハァ」


不本意でもあるが。

「なぁ、DVD入れていいか?」
「勝手にしろ」
「?」

皿を洗いながら深い溜め息が零れた。

思い返してみると、こいつと共にいた時間が一番長かったことを思い出し、やっぱり嬉しいようなめんどくさいような気持ちになった。




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