仙道夢

□仙道夢・純粋とは
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桜の日課は放課後体育館でバスケ部の練習を見る事。

もちろんお目当ては「仙道彰」

同じクラスメイトだが一言も話した事が無い。
いつも彼の周りには綺麗な女の子がいて、私なんて眼中にないんだろうな。

でも、ついつい目で追ってしまう。
綺麗な女の子の間から見える彼の顔。
気のせいかもしれないけど、目がいつも合う気がする。


練習が終わりそうな頃桜は体育館から出て行くと、水のみ場を通って自転車置き場に向かう。

「おい、佐々木じゃないか?」
突然声をかけられて振り向くとそこには越野がいた。
「越野君。」
越野とは1年生の時同じクラスだった。
「おまえ、毎日来てるけど仙道目当て?」
「え?あんなにギャラリーいるのにわかるの?」
多数の中に紛れれば自分なんて目立たない部類だから毎日見ててもわからないと思っていたから、越野の言葉に驚く。
「わかるよ。」と軽く答える越野にそれ以上いえず・・
「あ、別に仙道君目当てじゃないよ。バスケ見るの好きなんだ。私運動音痴だからあんな事できないから、ついついみとれちゃうんだよね。」
ハハハ・・とカラ笑いして桜は「じゃあね。」と越野に言うと自転車置き場に向かう。

「誰にみとれてんだか・・。」と、越野はひとりごちる。
「あれ〜、越野って佐々木と知り合いなの?」
水を飲みに来たのか、仙道がいつの間にか越野の後ろにいた。
「あ、ああ。元クラスメイト。あいつ可愛いよな。」
「・・そうだな。純粋な感じがいいよ。」
仙道はフっと笑う。




買ったばかりの本を読む為、桜は静かな音楽室に来ていた。
ここはベートーベンの肖像画が怖いだとか、ピアノが勝手に鳴るだとかで
生徒達が近づかない穴場なのである。

「なぁ、佐々木ってバスケが好きなの?」
突然頭上から声が降ってきた。

「え?せ・・・仙道君・・。」

読書が好きな彼女は新しい本を読み始めると決まって昼休み一人になる為
人気の少ない音楽室で読書するのを俺は知っていた。

「バ・・バスケ?あ・・うん。好きだよ。」
歯切れ悪くなんとか答える。
「なんで、仙道君・・ここに?」
(顔を真っ赤にして焦ってる姿って可愛いよなぁ。)
「あぁ、ここ静かだから・・。佐々木と二人きりになれるでしょ?」
ニコっと笑って意味深い事を言ってくる。
「わたしと・・??」
「そうそう。」
「なんで?」
「ん〜〜、練習中じぃっと俺の事見てるでしょ?だから、今度は俺が佐々木を見る番。」




(バ・・・バレてる)
桜は内心ひどく焦る。
「わ・・私を見ててもつまらないよ。」
「俺の事もそうだよ。わざわざ放課後残って見る程でもないだろ?」
「え?仙道君のバスケは見てて楽しいよ。」
クククっと仙道は楽しそうに笑う。
(こいつ、素直すぎ・・。)
「やっぱり俺の事見てるじゃん。ははは。」
「・・・からかってるならやめてよ。」
桜は椅子を引き立ち上がる。
仙道と二人きりだなんて心臓がもたない。
「ごめん。佐々木ってこんなに可愛いのに、俺なんかに気をとられてるの勿体無いよ。」

仙道彰はその容姿と人あたりからかなりモテた。
少しでも自分のタイプだと思えば、告白されたらすぐOKして体の関係まであっという間。
自他共に認める女たらし。

そんな自分にこんな純粋な佐々木が惹かれてるなんて・・
彼女が勿体無い。


だから忠告のつもりで来たわけなんだが・・・

「・・・私、可愛くないし・・・。それに、仙道君は、「俺なんか」っていうキャラじゃないよ。仙道君こそ、こんなに格好良いのわかってないよね。」
「あ、変な意味でとらないでね。」と焦りながら顔を赤くし後ずさりをする。

素直すぎる・・・

「あ、あと、もう練習見に行かないね。仙道君は要するに。。見に来るなって言いたかったんだよね。」
迷惑だったかぁ。。と、つぶやき、ごめんね。と謝る。

「あ、いやいや。そういう意味じゃなくて。佐々木が俺を好きだったら、俺なんか君につりあわないって言いたかっただけ。俺、遊び人だし。佐々木って純粋すぎるから。」






桜は仙道の部屋に一人ポツンと座っていた。
(あああああ、もうどうしてこうなっちゃったの〜。)
土曜日の午後の練習の後、仙道の両親が旅行中だからここに来る事になった。

彼があまりにも自分を『純粋』だとか言うから。
自分はそんなに綺麗な人間じゃない。と証明したくて自分から誘った訳なんだが・・。

(付き合ってもないし、付き合える保証もないのに。いくら好きなだけでこれってヤバイよね。)
こうみえても負けず嫌いだった。
だから売り言葉に買い言葉じゃないが純粋じゃない証明してあげるとか言ってしまった。


一方仙道はシャワーを浴びていた。
部活の後は必ず家に帰ったらシャワーを浴びるのが日課だ。

(ん〜〜、まさかこういう状況になるとは・・。あいつ前に誰かと付き合ってたとか、、噂あったっけか?)
いやいや、そういう問題じゃない。
越野が突然佐々木の事可愛いというから、先手必勝じゃないが声をかけてみた。
前から気になってはいたがやはり可愛い。素直で純粋だ。
休み時間になると彼女はいつも俺を見る。
気のせいじゃなければ、彼女は俺の事が好きだ。
目が合うと頬を赤くして俯きながら、その後は何事も無かったかのように友達と話す。

俺なんかには勿体無いくらい純粋培養でできている。と真剣に思ってしまった。




桜は必死に思い出す。
よく雑誌に載っている「Hなテクニック」を。
アレの舐め方や気持ち良いポイントとか・・
実際にやった事がないがした事あるようにしないと、仙道に「ほらね。」と笑われる。



仙道はすっかり騙されたと思った。
自分のモノを咥える彼女に驚きもあったが、すっかり騙されたと少し怒りすら芽生えた。
いつもより乱暴だったと思う。
彼女の中を何度も激しく突いた。
行為を終えると仙道はさらに驚いた。
自分のモノを引き抜く時、血がついていた。

「佐々木・・・・。」
「っ・・・。」
目に涙をためて痛みに耐え、桜が握っていたシーツにはうっすら血がついていた。
「あ・・あの・・気にしないで・・。私が・・望んだ事だから・・。」
痛みのあまりすぐに起き上がれない。
すぐに着替えてここから出て行きたい。

「わりぃ・・。」
仙道は細く白い肩を小刻みに震わせ、まだ続く痛みに耐えてる桜を後ろから抱きしめる。
前に付き合った女からは「彰が初めての相手じゃなくて良かった。なんか大きすぎて痛い。」と言われた事もあった。
「ごめんなさい。・・シーツ汚しちゃったね・・。」
自分の事よりシーツの事を心配する。
「なんで無理して・・こんな事。女の子には大事な事なんだろ?」
桜はこくっと頷く。
「大事な事だよ・・。だから・・仙道君で良かった。」






あれから1ヶ月。
クラスメイトという事以外全く桜と接点が無くなった。
放課後バスケ部を見に来ないし、教室でも目を全く合わそうとしない。
昼休み音楽室にもいない。

「おい。佐々木。」
放課後、自転車置き場で突然越野に声をかけられる。
「越野君・・。」
「お前最近バスケ見に来ないけど・・。なんか仙道とあった?」
とても言いにくそうにしている越野い思わず苦笑する。
「別にあったような無かったような・・。もう見に行かないから。」
「あの・・それがさ。お前が良かったらでいいんだけど、仙道と話してくれないかな。あいつ最近様子が変なんだ。」
仙道の小さな変化はたぶん越野にしかわからない変化なんだろう。
「試合も近いし、あいつがしっかりしてくれないと困るんだよな。」
と、本当に困った様子で桜に言う。



ムシャクシャする。
彼女を抱いてからずっとムシャクシャしっぱなし。
彼女は気にしないで・・と言ったが、あれは乱暴だったし、レイプに近いんじゃ・。
と後悔している。
なんであの時乱暴にしたかという理由もわかっていた。
純粋だと思っていた彼女が、自分に言い寄ってくるほかの女と違いが無いと勘違いしたから。
たぶん、桜が気になる相手ではなかったら感情的になる事は無かったんだろう。

あれ以来彼女は目を合わせようともしないし、教室以外同じ空間にいる事は無かった。

練習後、帰り道歩いているとふいに後ろから声をかけられる。
「あの・・・。」
告白か?今はそんな気分じゃない。
そう思いながら、後ろを振り返ると桜がいた。
「佐々木・・。」
思わず目を丸くし、顔を赤くしている彼女を見つめる。
「あの・・越野君が仙道君と話せって・・。様子が変って言うから・・。私のせいなのかな。と思って・・。」
「そうだよ。佐々木のせい。ずーっとココから消えない。」
そう言いながら自分の胸を指差す。
「なんで?」
「多分、乱暴に抱いたから。」
「後悔か・・。それは・・気にしないで。私が望んだ事だし・・・」
無理に笑う表情が可愛い。
「いや、乱暴に抱いた理由がわかったから。俺は・・・君が好きらしい。」

無言のまま俯いたまま時間が流れていく。
「まだ俺の事好きだったら、明日は部活見に来て。」


今日もまた目を合わせようとしない。
そんな桜の様子をみて、仙道はあきらめていた。


(「まだ俺の事好きだったら・・」って・・。そんな軽い気持ちで抱かれたとでも思っているの?)
彼に自分の気持ちはその程度だと思われて悲しくなる。
放課後、桜は体育館の入口で数人のギャラリーに紛れていた。

桜の周りのギャラリーが急にどよめく。
仙道が桜に話かけてきた。
「来てくれてありがとな。練習終わるまで待ってて。」
と、桜の肩をポンと叩く。
桜が返事する前に仙道はコートに戻ってしまう。



練習が終わりに近づくとギャラリーも段々と減っていく。
「仙道、先にあがれよ。お前、今日落ち着かないみたいだし・・。」
「あ、わりぃ。」
体育館から出る時に、桜の腕を引っ張っていく。


「ちょっと待ってて、すぐ着替えてくるから。」
部室の前で桜を待たせると、5分もせずすぐに着替えて出てきた。
「ホント・・すぐだったね。」
くすっと笑いそう言う。
(やっと・・笑った。)
仙道は内心ホッとし桜と学校を出る。



桜の家と仙道の家は割と近かった。
二人の家の間の距離にある公園で少し話そうと、仙道が誘う。
もう辺りは薄暗かった。


「あのさ、俺達両思いってやつでいいんだよな?」
仙道らしからぬ言葉だった。
「たぶん・・・。仙道君が私を好きなら。」
いちいち可愛い事を言う。と仙道は思う。

そうか・・彼女は純粋で天然なのだ。と思った。

「順番は違ったけど、付き合おう。」
自分からこんな言葉言った事ない。と仙道は笑う。
「仙道君に飽きられないように努力するね。」
たぶんいつもみたいに頬を赤くしているのだろう。しかし、うす暗くてはっきり見えない。
でも、はにかんだ顔が可愛い。

(素直で純粋で天然で・・努力家なのか・・。)


仙道は小さい彼女を思い切り抱きしめる。

そして彼女の耳元で囁く。

「俺も飽きられないように努力する。」
と、嬉しそうに微笑んだ。
 

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