□夢小説(不器用な“愛してる”)
□01.だから、この手を離す
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なぁ…
俺といて笑えてんの?
俺といて幸せ感じてんの?
お前は俺と一緒にいたいの――?
明け方4時
俺は煙草をふかす
ボロいアパートの部屋
湿気た畳の匂い
充満する煙草の煙
こんな小さい部屋にいるのに、手を伸ばしても何も届かないような、そんなでっかい場所に独りで座っているみたいだ。
吐いた煙草の煙が酒の臭いと混ざって、自分でもくせぇ…と思う。
空はまだ闇に包まれて、明けていくのはもう少し後だ。
明るさを確かめたら、何となく独りじゃないのかもな…と安心して、眠りにつける。
前は浴びるほど酒を飲めば、その辺で眠ったりもできたが、ここ最近はしこたま飲んでも頭の片隅が冴えてる。
それに…その片隅で、あいつが心配そうな顔をする。
俺は俺のスタイルを変えるつもりもねえし、わかってもらう気もない。
だが―――、
どっかで、もうそろそろちゃんとしねえとなぁっていい子ぶる俺がいる。
どんなにオンナと寝たって、その中につなぎ止めたいようなオンナはいなかった。
悪いがアレは1対1のスポーツくらいにしか思えない。
そこに愛情なんてない。後腐れなく、その場限り。
それでも相手は腐るほどいた。
中にはこの俺が怯むくらいのオンナもいたけど、それはそれで気持ちがよかった。
寄ってくるオンナを抱いて翻弄させてたのは、お袋の影が強すぎるのもかもしれない。
世の中こんな下世話なオンナが多いんだって、だからお袋…あんたは失意の中でも一筋に思ったまま逝っちまって菩薩みたいだったって言ってやりたいのかもしれねえ。
くだらねえ自己満足に他人を付き合わせて、俺は本当にくだらねえ人間だ。
なのに、何故お前は俺を選んだ――
いつ気が変わるかわかんねぇ俺を選ぶ――
赤木、青山、猿飛。
言いたかねえがいい奴らだ。
誰にしてもお前にとって不足はないはずだ。
なのに、何故俺なんだ――
なあ、お前の曇りのない優しい瞳を壊したくなるかも知んねえ。
酷く傷つけて潰したくなるかも知んねえ。
たまに湧き上がんだよ、そんな感情が――
なあ頼むから…
その目で見つめないでくれないか。
俺を許すのをやめてくれないか。
頼むから――
綺麗なままでいてくれないか…
俺のせいで汚れちまう前に。
だから、俺はこの手を離す。
今ならまだ間に合うだろ?