□夢小説(不器用な“愛してる”)
□11.お前だけが見えない
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さようなら
愛してました
最後の言葉がこだまする。
なんで過去形なんだよ。
もう一度
その声で…
その唇で……
その笑顔で……
俺に――。
『継ちゃん……○○ちゃんは、自分を犠、牲に……』
掠(かす)れる神谷の声を聞きながら、俺は拳を強く握る。
「うるせぇ」
ゼロをくい止めるだと。そんな力なんかねぇくせに。
相変わらず、わかったような面した正義感振りかざしやがって――
…どうして一人で抱え込むんだよ。
『継!君は基地に戻るんだ』
「あぁ!?」
通信から聞こえる長官の声。
『引き返せばまだ間に合う。犠牲を増やすわけにはいかないんだよ。向こうは超人ボーイと○○さんに任せるんだ!』
「ふざけるな!!」
『先ほどとは状況が違うんだよ』
長官の抑えた声色で俺は悟る。
もうゼロの無制限解放がカウントダウンの段階に入ったのだ、と。
だが、俺はドンッとハンドルを叩きつけ、言う。
「――俺が指示通りに動く奴がどうか、あんたが一番わかってんだろう。悪いが俺は俺のやりたいようにする。誰からの指示も受けねえ」
『待ちなさい!つぐ―……』
俺は通信を切り、再度アクセルを踏み込んだ。
荒い波を立て、カラーカーは進む。
そして、俺の目はすぐ旧海洋支部を捉えた。
しかし、その姿は小一時間ほど前に見た物とは違っていた。
「嘘だろ…」
島の中心部、基地に掛かるように張られている透明な巨大ドーム。
一目でわかる。
あれはピンクシールドだ。
ピンクシールドの中は眩く光っていた。
「○○――!!」
その光がゼロの無制限解放によるものだと、すぐにわかった。
裸電球を何万個も集めたような、そのまばゆい光に圧倒される。
ドームの表面がピキピキと音を立て、軋んでいる。
「無茶しやがって――!!」
カラーカーを更に加速させ、○○の元へと急いだ。
生い茂った木々の中を縫うように走る。
次第にハッキリと聞こえてくる爆発音は、近づいた証が、シールドが壊れる前触れか…
大きく車体を傾けながら走り抜けたカラーカーは林を突き抜け、だだっ広い空き地に出た。
いや、だだっ広いかったであろう、だ――
今そこには巨大なピンクシールドが存在していた。
視界を覆い尽くすシールドの近くにお前の姿を捉えた。
「ハートセット!!」
俺は急いで飛び降り、お前に向かって走った。