□夢小説(不器用な“愛してる”)
□08.不即不離
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あれから三日が経った。
表面上、何も変わらない俺たちは、毎日の勤務を終え、旧海洋支部行きの朝を迎えた。
ま、Jガーディアンズにはほとんど行かなかったが。それもまたいつも通りだ。
「ナビはすでに旧海洋支部に合わせています」
総務官の話を聞いて、俺たちは各々カラーカーに乗り込んだ。
俺は朝日を受けて光る水面を切りながら走っていた。
Jガーディアンズを出て、一時間半。
俺たちは旧海洋支部に着いた。
「思っていたより立派ですね」
初めて見るその施設を見ながら、お前は言う。
「旧と言っても、施設はきちんと整っています。問題はここの立地でしたからね」
キョロキョロしながら進む○○の数歩後を俺は進む。
「では、今から準備をしてきます。お二人は適当に時間を潰していてください。実験を開始する際は、また連絡します」
二人、か……
そんなことを考えていると、ふいにゼロがしゃべりだした。
「××、おかしい」
「え――」
「急に脈拍が早くなった」
「そ、そんなことないよ。ゼロくん、考えすぎだよ」
焦ったように、手を左右に降り、お前は否定した。
「やらしいことでも思い出したんだろ」
変化に目ざといゼロに怪しまれないよう、適当に理由を付ける。
「違います!!」
キッと睨みつける○○と、目があった。
「そうかよ」
「そうです」
何も変わっちゃいねえ、そんな錯覚に陥りそうな普通の会話。
「心配するな、ゼロ。早く行ってこいよ」
「わかった」
納得したのかしてねぇのかはよくわからねえが、ゼロは素直に頷いた。
「では、後ほど」
そう言うと、総務官とゼロは施設の奥へ消えていった。
俺もそれに続き、歩き出す。
「黒峰さん、どこに行くんですか…」
「昨日の酒がまだ抜けねえから、俺はサボる」
「また――」
「何かあったら、H・E・A・R・Tで呼び出せばいいだろ。じゃーな」
俺は○○を置いて、その場を立ち去った。
この後起こる出来事を、俺は知る由もなかった。