□夢小説(Blue blood)

□02.青天の霹靂
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 私はその場に立ちつくした。
 イルミネーションが優しく降りそそぐ。

 聞き間違いじゃない…よ、ね?

 私は青山さんを見つめながら何度も言葉を繰り返した。

結婚してくれないか?
結婚してくれないか?
結婚してくれないか?

 突然過ぎるその言葉。
 言葉だけが上滑りをして、一向に頭に入ってこない。
 私は理解するまでにしばらく時間が掛かった。

 青山さんは黙っている私から視線を逸らし、嫌ならきちんと断ってくれと言った。

「嫌なんてことありえません!!」

 急な大声に青山さんは驚き、顔を上げた。そして、ふっと息を吐いた。

「そうか…それならよかった。」

 その顔は安堵の色がにじみ出ていた。
 さすがに緊張したのだろう。
 その後、青山さんは私を見て優しく微笑んだ。

(今のが返事になっちゃうの?)

 私はちゃんと答えなくちゃと口を開く。

 (えっと…なんて言えばいいんだろう?)

 途中で違う会話を挟んだせいで、今さら「はい」というだけの答えでは格好が付かない。
 青山さんから「何がだ?」と訊かれて、もごもごと説明するのも恥ずかしい。

 私も結婚したいです…?
 その意見に賛成!!…?
 待ってました、その言葉……?

(…………)

 わからなくなる言葉を必死にかき集めて、私は精一杯の気持ちを伝えるために、青山さんを見上げた。

 深く深く呼吸をする…。

「青山さん…嬉しかったです。返事はもちろん…“はい”です。」
「あぁ…、ありがとう。」

 青山さんはこれ以上ないくらいの優しい瞳で私を見つめている。
 その瞳から愛おしいと思ってくれている気持ちが伝わった。
 
 私も青山さんへの愛おしさが溢れ、切なさで胸が痛い―――。
 好きとか愛してるでは表しきれない感情が次から次へと湧き起こった。

「何故、泣くんだ―――。」

 困ったような青山さんの声が冬空に響く。
 そう言われて初めて、私は涙が流れ落ちていたことに気が付いた。
 青山さんは頭を一度優しく撫でてから、私の頬をハンカチで拭ってくれた。

 ダメだ―――。

 私はそれを皮きりにドンドンと涙が出た。
 嬉しいのに切なくって…自分でも感情のコントロールが出来ない。

 止めどなく流れてくる涙を見た青山さんは、困ったように顔を近づけた。

「あいにく俺は涙を止めるような気が利いた言葉を持ち合わせていない。」

そう言って優しく抱き寄せてくれた。

 私は呼吸をするたびに全身にかけ巡っていく甘い疼きに痺れながら、喜びの時間を過ごしたのだった―――。


To be continued.
 

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