花宵ロマネスクU(仮)〜キミと仰ぎ見る明けの明星〜

□釣鐘の形の花。
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しげしげと花を見ながら
「この花って、色がとっても綺麗ですよね」
と言う。

「紫色のひとつで日本古来よりこの花の色を桔梗色と言うそうです」
濃い青紫の花にそっと私は手をのばす。

自分と同じ名前をつけられたこの存在をなぜだか手(た)折りたくなる。


顔色ひとつ変えず小さな命を奪うべく茎をもつ手に力を入れ始めたとき貴女が言った。


「桔梗先生はやはり愛されてたんですね」

「え?」
私は思わず剣呑(けんのん)な目つきで唐突な発言者を見やる。

私の不穏な様子に気づかないのか気づかないフリをしているのか、彼女は構わず話しを続けた。


「どなたが桔梗先生のお名前をつけられたかは知りませんが、絶対そうです」
ずいぶんと力説してくれる。

「私の生育環境はすでにご存知でしょう?」
せいぜいご高説賜(たまわ)ってやろうかと多少なりとも意地悪く構えた。
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