彩雲国物語〜極彩色な国で〜
□血の色
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「……絶対オレは認めねー」
「突然なんだ?米つきバッタ」
手をとめることなく包丁で茄子のへたをおとしながら静蘭は燕青に声をかけた。
「お前に流れる血のことだ」
ピクッと静蘭は反応してしまった。
燕青に自分の出自がバレたか、と。動物的勘だけはやたらと発達しているだけにあなどれない。
「……私の血がなんだと?」
必死に動揺を悟られないよう夕食のしたくを進める。
「……前から思ってたんだけどな」
もったいぶった言い方に静蘭は苛々してきた。
「……お前ってさ」
「言いたいことならさっさと言え」
我慢しきれず静蘭は促した。
「お前の体の血は絶対赤じゃねーよな」
な んだ、と?
「は?」
「イヤ、だって、絶対そうダロ?1日中、山で獲物捕りしたオレにさ、ちょっと姫さんからかったからって晩メシ抜きってのはひでーだろ」
静蘭の整った顔が少しずつ鬼の形相に変化していく。並はずれた美形の彼の怒りの表情は一般人がうっかり見た場合、その恐ろしさにおののくだろう。
だが、燕青は一般人ではなかった。