彩雲国物語〜極彩色な国で〜
□深遠なる悩み
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吏部侍郎 李絳攸は盛大なため息を今日もまたついた。
硯(すずり)に墨を注ぎ足しながらふと目を上げるとそこには山積された未処理の書簡。
多少なりともその量にげんなりとなるが実に見慣れた光景であり、いましがた出たため息のもとではなかった。
彼の目下最大の悩みはまた別のところにあった。
………今日こそは、切り出して、 いや、 でも、 あんまり急(せ)いても どうかと思うし、もしかしたら……かもしれないし。
仕事に集中しないといけないのに頭の中にはぐるぐる『とある問題』が居座り、そろそろ業務に差し障りが生じかけてきた。
はっきり言ってある意味危機を迎えている。
なんとかしないといけないのは分かっているが内容が内容なだけに絳攸はお手上げ状態だった。
もう一度大きく息を吐き出してから再び絳攸は手元の書簡に目を落とした。
そしてそれはここ数日まったく同じことの繰り返しであった。