花宵ロマネスク〜面影思ふ宵闇〜

□夢うつつの褥(シトネ)
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 幼い頃の俺には独りで寝るにはあまりにもその部屋は無機質かつ広すぎた。
 明かりを消すと途端に闇が支配するから寝る時は僅かではあったが明かりをつけたままにした。

 それでも、あの色の世界が俺を覆いつくしてしまいそうな、そんな日もあった。だから、どんなに疲れててもあまり眠りにつきたくはなかった。

 でも、今は違う。アンタが少しずつ俺を変えていってるから。寝室は怖くなくなってきた。

 いや、むしろ楽しくなってきたかもな。
なんでだと思う?先生。

 俺の夢の中にアンタが出てくるからだよ。



 シルクのシーツに囲まれた俺の腕の中で小さく震えてるんだ。

 「ヤメテ」って、可愛い声で言うのに夢の中の俺はやめようとはしない。
 まなじりにある涙を舐めとり悲鳴さえも飲み干してしまいそうにアンタに深く口づけるんだ。


 先生、あとはアンタが覚悟決めるだけだ。
 ここから先は俺が直接体で伝えるから。
 そう。泥沼のような快楽をくれてやるよ。

―だから、俺を選んで。

(了)
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