花宵ロマネスク〜面影思ふ宵闇〜
□スウィートキャンディ
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「先生、こちらでしたか」
教員資料室で独り調べ物している私に綾芽君が声をかけた。
「この間差し上げた飴どうでしたか?…あぁ、それは良かった。甘くて俺もかなり気に入ってるんですよ」
綾芽君はもう一度確認するように室内に視線を走らせる。ややあってそれまでの優等生然とした表情を変えてゆっくり口を開く。
「…やっとふたりきりになれた。…色々あって少し疲れた。授業中は頼りない教師がそそっかしいことしでかさないか気を使うし」
「それはどうも。お心づかい感謝します…頼りなくてホントすみませんね。」
「誰もアンタだなんて言ってないだろ?心あたりがあるんなら態度で示せ」
してやったりという表情がまさにぴったり。
まったくこの子は。油断も隙もあったもんじゃない。無駄だとは思いつつわざとため息つきながら
「で?綾芽君は何がお望みなの?」と聞いてみた。
綾芽君は当然の如くため息を無視して
「珍しく察しがイイね。俺の言うこときいてくれればそれでいい」
と平然と言い放つ。
「この飴俺に先生が舐めさせて。出来れば口移しがいい」
「後者は却下」
「ああ、分かってる。言ってみただけだ。いいよ。先生の指綺麗だから赦してあげる」
何が言ってみた、よ。